Real Estate Investment Trust
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今回は、「不動産ファンドブームの終焉と大和証券オフィス投資法人(8976)の誕生。」の前回の続きです。

DAオフィス投資法人を失ったダヴィンチのその後は?

ダヴィンチはまだ生きている

さて、大和証券オフィス投資法人としては、その後順調に成長を続けることになったので、ここで終わりでもよいのですが、その後のダヴィンチのことも触れておきます。不動産の世界は、回りまわって一周することもよくあるからです。

目立ちすぎて破綻させれないダヴィンチ

炎上する巨艦ダヴィンチホールディングスは、デフォルト危機の山場であったBNPパリバ(フランスのメガバンク)系投資会社からの220億円の融資に苦しんでいました。

2010年3月の返済期限については、6カ月の延長で合意を取りつけたものの、三菱東京UFJ銀行などの銀行団から返済期限延長を取り付けるといった条件付きであったため、予断を許さない状況が続いていたのです。

そして、ダヴィンチホールディングスは、2010年6月に、破綻ではなく、上場廃止という形で、表舞台から消えていきます。

これは、大阪証券取引所「ヘラクレス」が債務超過状態の企業に対して定めている「月間平均価格が1万円未満(1売買単位当たり)」という上場廃止の基準に抵触したということが理由です。

何とか生きている状態でありましたが、むしろ生かされていたのかもしれません。目立ちすぎて破綻させるには、影響が大きすぎたとも考えられます。

登場フォートレスの旦那

そんな2010年の7月に出てきた新たなニュースの登場人物は、フォートレスの旦那です。

米ファンドのフォートレス、ダヴィンチを実質支配(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXNASGC0801L_Y0A700C1EE1000/

米大手投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが国内不動産ファンドのダヴィンチ・ホールディングスを実質的な支配下に置いたことが、8日分かった。約205億円のダヴィンチ向け貸出債権や新株予約権をBNPパリバから取得し、過半数の議決権を行使できる立場を確保した。ダヴィンチは米大手ファンドの傘下に入り、再建をめざす。(2010.7.9)

フォートレス・インベストメント・グループは、アメリカの大手投資ヘッジファンドです。設立は、1998年で、破綻した企業などの債権を割引購入し、一部を株式化、経営再建に向けて積極関与することで投資回収を目指す手法に強みを持っているファンドでした。

さて、どこかで聞いた名前ではないですか。

フォートレス・インベストメント・グループは、インヴィジブル投資法人(8963)のスポンサーでしたね。この投資法人の運用会社を買収したのは、ダヴィンチを傘下に入れた翌年の2011年でした。

つまり、ダヴィンチ→インヴィジブル投資法人の順です。世の中狭いですね。

【REIT今昔物語】インヴィンシブル投資法人(8963)、買収した外資をさらに買収したあの日本法人の登場で米国をまたにかけた複雑な状況に。

とはいえ、ダヴィンチホールディングスは、そのまま取り込まれることはなく、返済を進め、期限の延長を受けながら、2014年に完済し、

http://da-gp.co.jp/dh/wp-content/uploads/2014/02/tmp-WCuVW.pdf

そして、言うまでもなく現在も生き続けているのです。


 

最近の元金子修社長

さて、だんだんとDAオフィス投資法人との関係がなくなってきましたが、ダヴィンチホールディングスの社長を退いた金子氏が再びニュース上に現れたのは、2016年の以下のリリースです。

第三者割当による新株式の発行、株式会社ダヴィンチ・ホールディングス株式の取得及び資本業務提携並びに主要株主の異動に関するお知らせ
http://ircms.irstreet.com/contents/data_file.php?mail_template=1&brand=255&folder_contents=31558&src_data=187207&filename=pdf_file.pdf

上記の第三者増資の第三者が金子氏です。スキームは、金子氏がロジコムの株式を7億で取得し、7億を得たロジコムがダヴィンチホールディングスの株式を保有するという株式交換のようなもので、ロジコムとダヴィンチホールディングスの資本業務提携です。

「金子氏の持つ豊富な海外投資家人脈を活用して今後はグループの不動産投資ファンド事業を進めていく」というのがロジコム側の目的でした。

ロジコムとは

ロジコムは、もともと1992年に設立され、主に再体験西部一帯で、サブリースビジネスや不動産賃貸ビジネス等を手掛け、今では、店舗、倉庫専門でプロパティマネジメントやマスターリースを展開している会社となっています。

このロジコムの子会社として、ファンド事業、アセットマネジメント事業を手掛けるため、2009年に設立されたのが、LCパートナーズでした。また、代表取締役である小山努氏は、まさに当時のダヴィンチでアセットマネジメント業務やDAオフィス投資法人の立ち上げを行った人物です。

つまり、ダヴィンチが傾いていた2009年に、同社は設立されたことになりますね。

ちなみに、ロジコムは、2005年に大証ヘラクレス(現ジャスダック)に上場されており、2016年には、商号をLCホールディングス株式会社に変更しています。

株式会社LCレンディングといえば、ご存知の方は、ソーシャルレンディングだなとなりますでしょうか。ロジコムセレクトファンドという名前で、商業不動産ローンファンドで資金を募り、LCホールディングスが元本と利息を保証するといったサービスが特徴です。

そして、2018年6月、このLCホールディングス株式会社の代表取締役社長として、金子氏が就任することになったのです。

金子氏と小山氏が再びタッグでリートの上場?

金子氏は、ダヴィンチホールディングスの社長の頃から、資金を集めることを得意としており、逆に物件の取得にはあまり関わらず、そのことが物件の高値掴みにつながったとの逸話も残っているほどです。

また、LCパートナーズが2017年に組成したポーリープラス投資法人は、商業物件や病院を組み入れて、上場を目指しているようですが、こちらの資金調達がうまくいかず、今回の金子氏招へいにもつながったと言われていますので、資金調達がスムーズにいくようになるのであれば、再びJリート市場に金子氏が戻ってくる日も近いのかもしれませんね。

ビーロット投資法人

さて、ここからもう少し続きます。2018年に起きた不祥事もあってか、LCホールディングス株式会社からグローム・ホールディングス株式会社へと商号変更しています。この際、ポーリープラス投資法人メディカルアセット投資法人と商号変更しているのですが、2020年には、以下のようなニュースがリリースされます。

株式会社LCパートナーズの株式及びメディカルアセット投資法人の投資口の取得(連結子会社化)に関するお知らせ

グローム・ホールディングス株式会社では、引き続き医療法人の経営支援・運営指導を行う医療関連事業を展開していますが、リートの運用は手放した形になります。

一方で、株式会社ビーロットは、国内外の富裕層・投資家を顧客とした資産運用サービスを手掛けていましたが、ビーロット・アセットマネジメント株式会社を設立し、手に入れたメディカルアセット投資法人ビーロット投資法人として運用することになったのです。

ちなみに、グローム・ホールディングス株式会社のもう一つの子会社である株式会社LCレンディングは、2020年に全株式をJトラストの子会社である株式会社プロスペクト・エナジー・マネジメントへ譲渡されています(2022年に解散)。

ここでプロスペクトという名前に反応した方は、以下の記事もどうぞ。

【REIT今昔物語】日本賃貸住宅投資法人(8986)、アップル外資の出資と日本初のリートTOBの末に。

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コメント

  1. 良いブログで感心しています。
    どんな方が書いているのかとても興味があります。

    こちらはREITの零細投資家、自営業、但しほとんど仕事をしていない環境です。
    週2日力仕事(いろいろ他人のために窓口を歩き回って手続きする)です。

    (金子さんには一度お会いしはなしたことがありますが、
    こちらの方には失礼ながら全く興味ありません。)

    私は大田舎、過疎地に住んでいます。最寄り駅も数年前に無人駅になりました。
    この20年は全くバブル繁栄の20年というもが率直な感想です。
    比較的近く(JRで1時間)の中核都市?の駅は、20年前は閑散としていました。
    しかし今はいつも年金生活者?と中国の方で賑わっています。
    昼に友達と話すために昼食をとろうとしても、入口に並ばなければなりません。
    それがいやで、4,000円前後の昼食をとる場所をつかっています。
    そこも最近は元気なおばあさんやおばさんが多くなって怪しくなってきました。
    月1で東京または京都に遊びに出かけます。
    東京の不動産の建設ラッシュにはずっと驚き続けています。
    デフレで不況?とはどこの話なのでしょうか。
    京都は外国人だらけでお祭りのようで驚くばかりです。
    ***
    このブログ楽しみにしています。
    1点わからないのは、なぜ償却前の収益が重視され、一方
    償却後の純収益が重視されないのかが、理解でないところです。

    配当利益の源泉は償却前の利益故、
    不動産の価値も償却前利益を基礎に考えられるべきと思ったりします。
    投資法人や会計等のリテラシーがないのでわからないのです。
    不動産の価値を収益面から計る事にかんし良い本でもありましたらご教授ください。

    • 現物の不動産投資の場合は、減価償却費が投資家の利益になるのですが、リートの場合は、減価償却費は投資法人にプールされるため、償却費を控除した後の利益が配当になります。この点、物流施設系のリートに多いのですが、減価償却の一部も配当に回すリートもありますので、例外はあります。

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