Real Estate Investment Trust
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今回は、ちょっと現物不動産の話です。アパート経営の敷金の話ですね。29年4月14日の日経新聞記事で取り上げられていますが、民法の改正に敷金のことを含まれています。こうした敷金のことは、リート(REIT)にも無関係ではありません。

ツケ取り立て5年まで、敷金は原則返還 民法大改正(日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H0L_U7A410C1EA4000/

 身近なところでは、賃貸住宅を借りた時の敷金も原則として返すように明記した。判例などによるルールは形成されていたが、民法に明記されたのは初めてで、退去時に絶えないトラブルを防ぐ狙い。国民生活センターによると「賃貸アパートを退去したが敷金をなかなか返してくれない」といった敷金や原状回復についての相談件数は、2015年度で1万4211件に達していた。
原状回復費用についても、通常の使用によって生じた損傷や時間がたったことで自然に家が傷む経年変化については、借り手に修繕する義務がないと明記された。(29.4.14 日経新聞)

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敷金とは

敷金とは、本来、借主の債務不履行を担保するための保証金であります。例えば、もし借主が賃料を払えなくなった場合に、貸主は無収入のまま借主に居室を提供し続けなければなりません。すぐに出ていってほしいと言っても、なかなかすぐには退去できないケースも多々想定されるところです。

そこで、こうした賃料の債務不履行を数か月分あらかじめ担保金として差し出しておくのが敷金です。ですから、退去する際に、家賃の滞納がないのであれば、返還されるのが原則です。

ですが、退去の際に問題となるのは、家賃滞納の有無ばかりではありません。居室を返還するにあたって、借主の過失や故意による損傷があった場合は、貸主に損害を賠償しなければならないケースも出てくることになりますが、その際、貸主が借主から敷金を預かっているので、そこから清算をしてしまおうということになるわけですね。

今回の民法改正で何かが劇的に変わるのか?

冒頭の日経新聞の記事には、「原状回復費用についても、通常の使用によって生じた損傷や時間がたったことで自然に家が傷む経年変化については、借り手に修繕する義務がないと明記された。」と書かれているわけですが、そのこと自体は、平成23年度に国土交通省から出されている「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にしっかりと書かれていることにすぎません。

ですから、大家や管理会社等の関係者で、今回の民法改正の内容に驚いている人は、まずいないハズ。こうして民法に規定されることも前情報として、結構広く知れ渡っていたことです。

実際、この「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って、対応されていたかは、ケースバイケースでしょうが、今回の改正でそれを徹底させたいということなのでしょう。

そして、むしろ、上記のように日経新聞などのメディアが報道し、さらには、広く様々なメディアに乗ってこの改正がいろいろな形と内容で伝えられるときに、本来の意味を超えたところにまで、話が広がることもあるのではないかと考えています。

本来的な問題はココ

本来問題となるのは、敷金を返す返さないということではないとも言えま。敷金自体は、極端な話、債務不履行である家賃滞納がなければ、返還しても差し支えないはずですから、分かりやすい事実です。

つまり、本来問題となるのは、貸していた借りていた居室が損傷を受けていた場合に、貸主借主のどちらが責任を負うのかという問題であります。すなわち、通常の使用によって生じた損傷や時間がたったことで自然に家が傷む経年変化は、貸主が負担し、通常ではない使用によって生じた損傷や経年変化ではない損傷は、借主が負担するということです。これは、いわば当たり前の原則とも言えます。

ただ、やはりこの問題が民法の改正によることとなった経緯からして、通常の使用によって生じた損傷等でも、借主に負担を負わせていたことが多かった、むしろ当然にすらなっていたということなのではないでしょうか。

わたし自身、若かりし頃、借主という立場で、敷金は少しも返還された覚えはないのです。

この点、貸主である大家はじめ賃貸業関係者としても、その損傷の負担を借り主に負担させるべきかといった観点から、もう一度基本に戻った対応が求められるところかと思います。

ですから、この問題は、あくまで敷金=返還という画一的なことではなく、居室が損傷を受けていた場合に、貸主借主のどちらが責任を負うのかという問題として、やはり話し合われるべきことかと思います。

そして、やはり通常の使用によって生じた損傷や時間がたったことで自然に家が傷む経年変化は、貸主が負担し、通常ではない使用によって生じた損傷や経年変化ではない損傷は、借主が負担するという原則は、今後も変わりのないことでしょう。



リートにおける投資法人への影響

最後に、本サイトは、リートの話題が本業ですから、今回の民法改正が及ぼすリートへの影響を考えてみたいと思います。これについては、特に賃貸マンションを保有する投資法人に、まったく影響がないとは言えないと考えています。

リートもその収益は、不動産賃貸業ですから、やっぱり影響があり得るんですね。個人大家さんと同じです。

ちなみに、投資法人がどれほどの敷金を抱えているか、確認をしてみたことはありますでしょうか。例として、大手居住系リートであるアドバンス・レジデンス投資法人(3269)の決算書を見てみましょう。

2017年1月期決算短信
http://www.adr-reit.com/src/2017/03/b2616ccfab1c9e7fbc683ea2551d6eb0.pdf

14ページの貸借対照表のうち、「預り敷金及び保証金」「信託預り敷金及び保証金」の合計4,445,648千円が該当します。実に、44億もの規模になります。一方で、現金預金の合計値が27,243,879千円となっており、そのうち敷金等の割合が16%程度占めていることになります。

敷金は、実際に一定程度は、退去の際に原状回復工事に充てているものと思われます。その一定程度がどのくらいかは、決算書からは読み取れませんが、この一定程度が減少すれば、投資法人の収益は、減少することになりますね。

この敷金事務を実際にになっているのは、投資法人の職員ではなく、業務委託先の管理会社等でしょう。ですが、その管理会社の方でケチが付けられ、訴訟となれば、大家である投資法人も関係せざるを得ません。

また、実際問題、投資法人もそのあたりは、世間的なこともあろうかと思いますので、敷金は原則返還するといったことが想像できるような気がしますし、委託先の管理会社としても、ハナからそのように対応するとも思います。

実際、1件あたりの敷金は、十万、二十万程度のことですから、それで争いになって、費用をかけるよりかは、さっさと返還して、次の入居者を募集したいはずです。

まあ、大手になればなるほど、無理は言えませんよね。ただ、これは想像にすぎません。

とはいいましても、実際にどの程度の影響があり得るのかは、決算書から読み取れない以上、リートフェアなど、担当に質問しないと分かりませんが、敷金の取り扱いについて、投資法人としての対応を変更するのか、しないのか、といったことを確認してみるということでしょう。

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