65歳以降の生活に必要な資金は、世帯構成や年収、生活レベルによって、人それぞれです。これから、何回かに分けて、前提条件別のシミュレーションをしてみたいと思います。
朝日新聞の記事をもとに、65歳時点で準備しておきたい老後資金30年分のシミュレーションをしてみるよ。
なお、試算の前提条件は以下のとおりです。
(参考文献:朝日新聞)
https://www.asahi.com/relife/article/15891945
| ■生活費: 生活レベル普通⇒月26万円 生活レベル高め⇒月31万円 ■持ち家あり:上記生活費に住居費を含む(住宅ローン返済終了と仮定) ■持ち家なし:家賃月8万円・更新料1カ月分として、30年間で約3000万円 ■医療・介護費:700万円 ■年金見込み手取り額:平均年収をベースに算出した金額の8割と仮定。繰下げはしない |
目次
前提となる世帯情報
世帯年収900万円(夫婦とも会社員〈退職金あり〉・持ち家あり・生活レベル高め)
| 月額 | 30年間の合計 | |
| 収入 | 手取り年金見込み額:約23万円 | 23万円 × 12カ月 × 30年間 = 8280万円 |
| 退職金 | 1800万円 | |
| 支出 | 生活費 31万円 | 31万円 × 12カ月 × 30年間 = 11160万円 |
| 医療・介護費 | 700万円 | |
| 必要となる老後資金(収入 – 支出) | (8280万円+1800万円)-(11160万円+700万円) = 1780万円必要 | |
なお、元の記事では、66歳から70歳まで就労して1,800万円を得る想定でしたが、上記では、退職金としています。
Jリート投資による不足額の補填を考える
さて、ここからが本題ですが、不足額の1780万円を、約1800万円とし、NISA口座で「NEXT FUNDS東証REIT指数連動型上場投信(銘柄コード:1343)」を運用した場合の積み立て投資の必要額をシミュレーションします。
「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信(1343)」の買付手数料は、わたしの使用している証券会社では、無料対象です。そういう証券会社を利用しましょう。
なお、信託報酬は、年率0.1705%(税込)以内ですから、シミュレーションにとって、ほぼ無視できるレベルです。
リターンの想定と内訳
「NEXT FUNDS東証REIT指数連動型上場投信」の過去の長期的な推移をベースにすると、おおよそ以下のような構成になります。
| 構成要素 | 期待値 (年率) |
解説 |
| 分配金利回り | 約4.0%~4.5% | 保有しているだけで得られる現金収入。J-REIT全体の平均利回りは概ねこの水準で推移します。 |
| 価格騰落率 | 約0.5%~1.0% | 物件の賃料上昇や資産価値の増加による価格の値上がり。つまり、投資口価格の暴落率で、株式に比べると緩やかです。 |
| 合計(トータル) | 約5.0% | これが複利運用の原動力となります。 |
65歳時点で必要な運用残高(シミュレーション)
30年で不足する1,800万円を30年(360ヶ月)かけて使用するには、月5万円を取り崩し切ることになります。この場合、65歳のときに「NEXT FUNDS東証REIT指数連動型上場投信」の積立額がいくらあれば良いのかを想定リターン別にシミュレーションします。
また、持ち家あり想定で、65歳までは別途住宅ローンの返済をしている場合もありますが、人によって異なるため、ここでは考慮外とします、
| 想定リターン (年率) |
65歳時の 必要残高 |
30年間の 総受取額 |
備考 |
| 5.0% (トータル) | 約931万円 | 1,800万円 | 運用益が約869万円分を補填 |
| 4.0% (分配金のみ) | 約1,047万円 | 1,800万円 | 運用益が約753万円分を補填 |
| 参考: 0% (現金) | 1,800万円 | 1,800万円 | 運用なしの場合 |
- 「運用益」が半分近くを賄う 65歳以降、年利5.0%で運用できる場合、元本は約931万円あれば足ります。これは、取り崩している最中も残った資産が複利で増え続けるためです。結果として、自分で用意する元本よりも、運用で増える分(約869万円)の方が大きな役割を果たすことになります。
- 取り崩し方法のイメージ 東証REIT指数連動型上場投信(1343)は年4回分配金が出ますが、このシミュレーションでは「分配金」と「ETFの売却」を組み合わせて、毎月均等に5万円を作るイメージです。
・5.0%の場合: 分配金(4.0%)を受け取りつつ、足りない分や価格が上昇した分(1.0%)を少しずつ売却して5万円を捻出します。 - 1.0%の価格騰落率の恩恵 価格が年1.0%ずつ上昇すると仮定すると、保有している口数の価値が上がるため、将来的に「売却しなければならない口数」が少なくて済みます。これが、4.0%運用の時よりも必要元本が100万円以上少なくて済む理由です。
- 注意点:税金の影響
もしこれらを「特定口座(課税口座)」で行う場合、利益に対して約20%の税金がかかります。
5.0%(税引き後)で月5万円を確保したい場合: 65歳時点での必要額は 約1,170万円 程度に増えます。
65歳までの積み立て額(シミュレーション)
では、次に、上記の65歳時点での必要額に対し、毎月いくら投資に回せば目標額に到達するかを算出します。
パターンA:目標額 931万円(運用リターン 5.0%想定)
| 現在の年齢 | 準備期間 | 毎月の積立額 | 元本合計 | 分配金の再投資分 |
| 30歳 | 35年 | 約8,300円 | 約349万円 | 約582万円 |
| 40歳 | 25年 | 約15,700円 | 約471万円 | 約460万円 |
| 50歳 | 15年 | 約35,000円 | 約630万円 | 約301万円 |
パターンB:目標額 1,047万円(運用リターン 4.0%想定)
| 現在の年齢 | 準備期間 | 毎月の積立額 | 元本合計 | 分配金の再投資分 |
| 30歳 | 35年 | 約11,500円 | 約483万円 | 約564万円 |
| 40歳 | 25年 | 約20,400円 | 約612万円 | 約435万円 |
| 50歳 | 15年 | 約42,600円 | 約767万円 | 約280万円 |
いかがでしょうか。思ったよりも毎月の積み立て額が多額ではないと思いませんか。これが分配金の再投資の威力です。
- 「時間の力」の圧倒的な差 30歳から始めた場合、50歳から始めるのと比べて、月々の負担は約 1/4 で済みます。これは運用期間が長くなるほど、利息が利息を生む「複利効果」が爆発的に効いてくるためです。
- 50歳からのスタートでも現実的 50歳から始めた場合でも、月々3.5万円〜4.3万円程度の積立で目標に届きます。これは一般的な現役世代の貯蓄ペースとして決して不可能ではない数字です。
- 東証REIT指数連動型(1343)の特性 1343は分配金が多いため、積立期間中は「分配金を再投資」し続けることが重要です。分配金を受け取らずに再投資に回すことで、上記のシミュレーションのような複利効果が得られます。
40歳からスタートした場合の積立額残高の推移(年利5.0% Ver.)
前提条件は、前回の試算で最も効率的だった「トータルリターン5.0%」のパターンを採用します。
「NEXT FUNDS東証REIT指数連動型上場投信」は、設定来(2008年〜)で見ると、分配金を除いた基準価額自体も上昇しており、年平均に直せば 1.0%という数字は決して無理な仮定ではありません。しかし、心配な方は、のちに示す分配金のみ(年利4.0%)Ver.をご参照ください、。
シミュレーション条件
・積立期間(40歳〜64歳): 毎月 約15,700円 を積立運用(年利5.0%)
・取り崩し期間(65歳〜95歳): 運用を継続しながら、毎月 50,000円 を受取
・65歳時点の目標残高: 約931万円
以下の表は、各年齢時点での「運用残高」のイメージです。
| 年齢 | ステータス | 毎月の収支 | 運用残高 (推計) |
備考 |
| 40歳 | 始める | +15,700円 | 0円 | 運用スタート |
| 45歳 | 積立中 | +15,700円 | 約106万円 | 元本 約94万円 |
| 50歳 | 積立中 | +15,700円 | 約243万円 | 運用益が膨らみ始める |
| 55歳 | 積立中 | +15,700円 | 約418万円 | |
| 60歳 | 積立中 | +15,700円 | 約642万円 | |
| 65歳 | 定年・転換 | -50,000円 | 約931万円 | ピーク。ここから取り崩し |
| 70歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約828万円 | 5年で300万受取、残高は100万減 |
| 75歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約695万円 | |
| 80歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約526万円 | |
| 85歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約309万円 | |
| 90歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約31万円 | 残りわずか |
| 95歳 | 終了 | – | 0円 | 30年間の大往生 |
※参考1 40歳〜50歳の積立残高推移(1歳刻み)
運用状況が見えやすいように、40歳から50歳までの10年間について、1歳刻みの積立残高推移を算出しました。「40歳開始・毎月15,700円積立・年利5.0%(複利計算)」に基づいています。
| 年齢 | 累計積立元本 | 運用残高 (推計) |
運用益(5%) | 備考 |
| 40歳 | 18.8万円 | 約19.3万円 | 0.5万円 | 運用スタート |
| 41歳 | 37.7万円 | 約39.5万円 | 1.8万円 | |
| 42歳 | 56.5万円 | 約60.7万円 | 4.2万円 | |
| 43歳 | 75.4万円 | 約83.0万円 | 7.6万円 | |
| 44歳 | 94.2万円 | 約106.4万円 | 12.2万円 | 元本100万弱に対し残高が100万突破 |
| 45歳 | 113.0万円 | 約131.0万円 | 18.0万円 | |
| 46歳 | 131.9万円 | 約156.9万円 | 25.0万円 | |
| 47歳 | 150.7万円 | 約184.0万円 | 33.3万円 | |
| 48歳 | 169.6万円 | 約212.5万円 | 42.9万円 | |
| 49歳 | 188.4万円 | 約242.4万円 | 54.0万円 | |
| 50歳 | 207.3万円 | 約273.8万円 | 66.5万円 | 元本の約1.3倍に成長 |
※参考2 65歳〜70歳の資産残高推移(1歳刻み)
運用状況が見えやすいように、65歳から70歳までの5年間もお示しします。資産が最も積み上がった状態から「運用を継続しつつ、不足分を切り崩していく」という、非常に重要な資産寿命の分岐点となります。条件は、「年利5.0%運用・毎月5万円(年間60万円)を取り崩す」*
| 年齢 | 運用残高(期首) | 年間受取額 | 運用益(5%) | 運用残高(期末) |
| 65歳 | 931.0万円 | ▲60万円 | +45.1万円 | 約916.1万円 |
| 66歳 | 916.1万円 | ▲60万円 | +44.3万円 | 約900.4万円 |
| 67歳 | 900.4万円 | ▲60万円 | +43.5万円 | 約883.9万円 |
| 68歳 | 883.9万円 | ▲60万円 | +42.7万円 | 約866.6万円 |
| 69歳 | 866.6万円 | ▲60万円 | +41.8万円 | 約848.4万円 |
| 70歳 | 848.4万円 | ▲60万円 | +40.9万円 | 約829.3万円 |
※参考3 分配金年額の推移(40歳〜95歳)
積立額は月1.57万円、トータルリターン5.0%(分配金4.0%+価格上昇1.0%)の条件です。
| 年齢 | 運用残高 | 分配金(年額) | 月次換算 | 備考 |
| 40歳 | 0円 | 0円 | 0円 | 始める |
| 45歳 | 約106万円 | 約4.2万円 | 3,500円 | 分配金は再投資へ |
| 50歳 | 約243万円 | 約9.7万円 | 8,000円 | |
| 55歳 | 約418万円 | 約16.7万円 | 13,900円 | |
| 60歳 | 約642万円 | 約25.6万円 | 21,300円 | |
| 65歳 | 約931万円 | 約37.2万円 | 31,000円 | 取り崩し開始 |
| 70歳 | 約828万円 | 約33.1万円 | 27,600円 | 不足分は売却で補填 |
| 75歳 | 約695万円 | 約27.8万円 | 23,100円 | |
| 80歳 | 約526万円 | 約21.0万円 | 17,500円 | |
| 85歳 | 約309万円 | 約12.3万円 | 10,200円 | |
| 90歳 | 約31万円 | 約1.2万円 | 1,000円 | |
| 95歳 | 0円 | 0円 | 0円 | 完了 |
40歳からスタートした場合の積立額残高の推移(年利4.0% Ver.)
次に、前提条件は、「トータルリターン4.0%」のパターンを想定してみます。このパターンでは、株価の値上がり益を想定せず、分配金のにのリターン4.0%で運用します。
シミュレーション条件
・積立期間(40歳〜64歳): 毎月 約20,400円 を積立運用(年利4.0%)
・取り崩し期間(65歳〜95歳): 運用を継続しながら、毎月 50,000円 を受取
・65歳時点の目標残高: 約1,047万円
資産残高の推移表(40歳〜95歳:価格成長0%・年利4%)
| 年齢 | ステータス | 毎月の収支 | 運用残高 (推計) |
備考 |
| 40歳 | 開始 | +20,400円 | 0円 | 積立スタート |
| 45歳 | 積立中 | +20,400円 | 約137万円 | |
| 50歳 | 積立中 | +20,400円 | 約303万円 | |
| 55歳 | 積立中 | +20,400円 | 約507万円 | |
| 60歳 | 積立中 | +20,400円 | 約756万円 | |
| 65歳 | 定年・転換 | -50,000円 | 約1,047万円 | ピーク。ここから取り崩し |
| 66歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約1,029万円 | 分配金41.9万、不足18.1万を売却 |
| 70歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約949万円 | |
| 75歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約830万円 | |
| 80歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約685万円 | |
| 85歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約508万円 | |
| 90歳 | 取り崩し | -50,000円 | 約292万円 | |
| 95歳 | 終了 | – | 0円 | 30年間完走 |
この「保守的プラン」のポイント
-
積立額の増加
「年利5.0%」の時は月約1.57万円でしたが、「年利4.0%」では月約2.04万円が必要になります。月々約4,700円の負担増ですが、その分、市場の成長に期待しすぎない堅実な計画となります。 -
65歳時点の必要額
目標金額が 約1,047万円 と、5.0%運用の時より約116万円多く必要です。「価格が上がらない」ということは、生活費のために売却する際、常に同じ価格(あるいは相対的に安く)売らなければならないため、より多くの元本が必要になるからです。 -
資産寿命の安定性
価格成長を0%で見込んでいるため、もし実際にはREIT価格が年1%でも上昇すれば、この計画には「ゆとり」が生まれます。95歳時点で数百万円残るか、あるいは月々の受取額を6万円に増やすといった調整が可能になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。分配金を再投資することで、思っていたよりも、65歳までの積み立てハードルが下がり、分配金を再投資し続けることで、65歳以降も運用残高の減少が緩和されることが伝わりましたでしょうか。
積み立てを開始するのが早ければ早いほど、積立額が少なくて済みます。あなたがもし最初の想定に当てはまる方であれば、本シミュレーションを参考に積み立てを早めに開始することをお勧めします。

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