Real Estate Investment Trust
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前回の記事では、65歳までの必要額の積み立てと、95歳までの取り崩しのシミュレーションを行いました。しかし、投資に絶対はありません。

今回は、65歳の時点で、積み立てた資産の株価が下落し、目標としていた金額に満たなかった場合のシミュレーションと対応策を取り扱います。

例えば、買値の25%が下落していたケースを想定するね。

【シミュレーションあり】Jリート分配金の再投資でじぶん年金をつくろう①

65歳という、いよいよ取り崩しを始めるタイミングで資産が予定の目標額、約931万円(年利5.0%を想定時)から700万円(約25%の下落)に減ってしまった場合、何もしないと資産寿命は大幅に短くなってしまいます。

この「シーケンス・オブ・リターン・リスク(取り崩し初期の暴落リスク)」にどう立ち向かうべきか、シミュレーションと対策をまとめました。

何もしなかった場合のシミュレーション

700万円の元本から、当初の予定通り「年利5.0%(運用継続)」で「月5万円」を取り崩し続けた場合、資産はどうなるでしょうか。

  • 資産が底をつく年齢:約79歳〜80歳

  • 本来の目標(95歳)までの不足年数:約15年分

当初は30年持たせる予定だった資産が、約14〜15年でゼロになってしまいます。暴落時に「安い価格で多くの口数を売却(解約)」してしまうため、資産の回復力が失われるのが原因です。

資産残高の推移表(暴落スタート・対策なし:年利5.0%)

年齢 運用残高(期首) 年間受取額 運用益(5.0%) 運用残高(期末) 備考
65歳 700.0万円 ▲60万円 +33.5万円 約673.5万円 運用益が受取額に追いつかない
70歳 673.5万円 ▲60万円 +28.9万円 約516.4万円 5年で約180万円減少
75歳 516.4万円 ▲60万円 +21.0万円 約315.7万円 残高が加速度的に減り始める
80歳 315.7万円 ▲60万円 +11.0万円 約59.5万円 この付近で資金が底をつく
85歳 59.5万円 0円 破綻済み
90歳 0円 0円
95歳 0円 0円

 

この結果が示す恐ろしい真実

  1. 「逆複利」の罠
    本来の計画(931万円スタート)では、65歳時の運用益が年間約45万円あり、手出しは15万円で済んでいました。しかし、700万円スタートだと運用益が約33万円に減るため、年間27万円(本来の約1.8倍)もの元本を削る必要が出てきます。

  2. 一度減りだすと止まらない
    元本を削るスピードが速まると、さらに翌年の運用益が減り、また元本を削る……という「負のスパイラル」に陥ります。これが、たった230万円の初期不足(931万と700万の差)が、最終的に15年分の寿命短縮につながる理由です。

  3. 80歳で資産がゼロになるリスク
    ちょうど介護費用や医療費がかさむ可能性が高い80歳前後で資産がなくなるのは、老後設計において最も避けるべきシナリオです。

※参考 株価下落後も2年間分配金が維持された場合

ただここで、リートの仕組み上、投資口価格がたとえ25%下落したとしても、すぐに分配金が下落するわけでもない、というのは事実です。

そこで、下落した700万円に対して、最初の2年間は「暴落前(931万円時)の分配金額」が維持され、3年目からついに家賃改定等で「700万円×利回り」に収束していく、という「猶予期間あり」のストレスシナリオで計算します。

シミュレーション条件

  • 65歳時点: 931万円が700万円に暴落してスタート。

  • 1〜2年目(猶予期):
    分配金:年37.2万円(旧931万円×4%)を維持。
    取り崩し:合計月5万円(年60万円)を継続。不足分22.8万円のみを売却。

  • 3年目以降(収束期):
    分配金:その時点の残高 × 4.0% に減少。
    価格上昇:年1.0%(トータルリターン5%)は継続。

資産残高の推移表(暴落+分配金2年維持シナリオ)

年齢 運用残高(年初) 分配金(維持/減少) 不足分の売却 運用残高(年末) 備考
65歳 700.0万円 37.2万円 ▲22.8万円 約684.2万円 猶予1年目(価格成長1%込)
66歳 684.2万円 37.2万円 ▲22.8万円 約668.2万円 猶予2年目
67歳 668.2万円 26.7万円 ▲33.3万円 約641.6万円 3年目:分配金が減少
70歳 641.6万円 約25.6万円 ▲34.4万円 約555.2万円 以降、減少が加速
75歳 555.2万円 約22.2万円 ▲37.8万円 約388.9万円
80歳 388.9万円 約15.6万円 ▲44.4万円 約178.6万円
83歳 178.6万円 約7.1万円 ▲52.9万円 約34.5万円
84歳 34.5万円 0円 84歳で底をつく
  • 「2年間の猶予」で寿命が4年延びる 以前の「即座に分配金が減る」シミュレーションでは80歳で底をついていましたが、このシナリオでは84歳まで持ちます。最初の2年間、高い分配金を維持しながら「元本を削る量」を最小限に抑えられたことが、4年間の寿命延長に貢献しました。

  • それでも84歳で終わる理由 3年目から分配金が「実力値(700万ベース)」に落ちると、年間受取額60万円のうち、半分以上の33万円以上を「身を削る売却」で補わなければなりません。この「身を削るスピード」が早すぎるため、95歳までは届きません。

ここまでは、いかがでしたでしょうか。上記シミュレーションの注意点ですが、想定上、資産株価が25%下落した、その元本に年利を乗じていますが、通常リートの場合、すぐに分配金が減少するわけではありません。

また、いくら暴落したとしても、いつかは反転するはずです。ここでは、無対策の効果を示すために、あえて、株価が元に戻さずに厳しくシミュレーションをしています。

回避するための3つの対策

いくつかのパターンの下落時シミュレーションをしてきましたが、結局のところ、下落後にどのような分配金の推移となり、株価がいつ元に戻るかが分からない以上、すべてのパターンでシミュレーションすることは無意味です。

少なくとも、私たちは、このような株価下落の局面に備え、あるいは直面した際、以下の方法で資産寿命を延ばすことができることを知っておく必要があります。

① 取り崩し額を「分配金のみ」に絞る(守りの運用)

元本(口数)を削る「売却」を一時停止し、1343から出る「分配金」だけで生活する期間を作ります。

  • 700万円の4.0% = 年間28万円(月2.3万円)

  • 効果: 市場が回復するまで元本を維持できるため、価格が戻った後に取り崩し額を再開すれば、資産寿命を大幅に延ばせます。

② 「現金クッション」を持っておく(事前の備え)

運用資産931万円とは別に、2〜3年分の生活費(120万〜180万円程度)を現金で持っておきます。

  • 暴落時の対応: 暴落したETFには手をつけず、この現金から月5万円を出します。

  • 効果: 2〜3年の間にREIT価格が回復すれば、ETFを安値で売らずに済み、計画を維持できます。

③ 取り崩し額を減らす(柔軟な対応)

月5万円を月3.5万円程度に減額します。

  • 効果: 700万円の元本でも、月3.5万円の取り崩し(5%運用)であれば、約95歳まで持たせることが可能です。

資産残高の推移表(暴落スタート・対策なし:年利5.0%)

年齢 運用残高(年初) 運用益(5%) 取り崩し(年) 年末残高
65歳 700.0万円 +35.0万円 ▲42.0万円 693.0万円
70歳 661.7万円 +33.1万円 ▲42.0万円 652.8万円
75歳 609.5万円 +30.5万円 ▲42.0万円 598.0万円
80歳 536.2万円 +26.8万円 ▲42.0万円 521.0万円
85歳 433.0万円 +21.7万円 ▲42.0万円 412.7万円
90歳 288.7万円 +14.4万円 ▲42.0万円 261.1万円
95歳 83.8万円 +4.2万円 ▲42.0万円 46.0万円

今回の「95歳完走」の根拠: トータルリターン5.0%が維持されるなら、年間の運用益(約30万円前後)が、取り崩し額(42万円)の大部分をカバーし続けるため、95歳まで持ちこたえることが可能です。

さらに慎重を期して、「価格成長が0%で、年利4.0%(分配金のみ)」という厳しい条件において、700万円から月3.5万円(年間42万円)を取り崩した場合のシミュレーションを出し直します。

リターンが1%下がるだけで、資産寿命にどのような影響が出るかをご確認ください。

資産残高の推移表(700万円スタート・年利4.0%・月3.5万円受取)

年齢 運用残高(期首) 運用益(4.0%) 年間受取額 運用残高(期末)
65歳 700.0万円 +28.0万円 ▲42万円 約686.0万円
70歳 640.4万円 +25.6万円 ▲42万円 約624.0万円
75歳 559.2万円 +22.4万円 ▲42万円 約539.6万円
80歳 453.6万円 +18.1万円 ▲42万円 約429.7万円
85歳 316.6万円 +12.7万円 ▲42万円 約287.3万円
90歳 139.1万円 +5.6万円 ▲42万円 約102.7万円
91歳 102.7万円 +4.1万円 ▲42万円 約64.8万円
92歳 64.8万円 +2.6万円 ▲42万円 約25.4万円
93歳 25.4万円 +1.0万円 ▲42万円 約0円(底をつく)
  • 5.0%運用との比較

    • 5.0%運用: 95歳時点でも約46万円残る。

    • 4.0%運用: 92歳でほぼ終了。 わずか1%の利回りの差が、人生の最終盤において約3年分の生活費の差となって現れます。

  • リスクへの備え 「4.0%運用でも92歳までは持つ」という事実は、ある種のリリーフ(安心材料)になります。もし65歳で暴落しても、月3.5万円に抑えれば、92歳までは確実に生活を維持できるからです。その間に市場が少しでも回復(年1%の上昇など)すれば、余裕で95歳を突破できます。

 

 REIT(1343)特有の安心材料

幸いなことに、1343(東証REIT指数)のようなインデックス投資の場合、「価格は下がっても、分配金はそこまで急落しない」という傾向があります。

過去の例(コロナショック時): REITの価格は一時的に40%近く暴落しましたが、分配金(賃料収入)はそこまで極端には減りませんでした。つまり、生活費の「全額」を売却に頼るのではなく、「分配金」をベースにしていれば、暴落時のダメージを緩和しやすいという強みがあります。

 

まとめ

ここまでの全てのシミュレーションを統合すると、以下のプランが最も堅実です。

  • 目標: 65歳までに「運用資産931万円」+「現金予備費120万円」を貯める。

  • もし暴落したら: 月々の受取を3.5万円に絞り、足りない1.5万円を「現金予備費」から出す。

  • 効果: これにより、実質月5万円の生活を維持しながら、資産寿命を95歳以上に延ばすことができます。

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