Real Estate Investment Trust
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今回は、総合型リートである大和ハウスリート投資法人(8984)の第21期(2016年08月期)決算をcheckしていきたいと思います。

決算説明会資料
http://www.daiwahouse-reit.co.jp/file/term-ffa738b8a347326c0d822d8698a205d470c6690a.pdf

主な特徴など

大和ハウスリート投資法人(8984)は、2016年9月1日付けで、物流施設と商業施設を投資対象とする大和ハウスリート投資法人と大和ハウス・レジデンシャル投資法人とが合併し、「大和ハウス・レジデンシャル投資法人」を存続法人として、名称を「大和ハウスリート投資法人」に変更したものです。結果、住居、物流、商業などを保有する総合型リートとなっています。

大和ハウス・レジデンシャル投資法人の前身は、ビ・ライフ投資法人です。モリモト・アセットマネジメント株式会社が運営を行っておりましたが、リーマンショックの暴風が止みやまぬ2008年、大和ハウス工業をスポンサーとする体制に変更となり、2011年には、破綻したニューシティ・レジデンス投資法人と合併しています。この際、投資法人名称を大和ハウス・レジデンシャル投資法人とし、住居特化型となったのが経緯です。

一方で、旧大和ハウスリート投資法人は、2012年上場の物流施設と商業施設を組み合わせた複合型リートです。

直近の業績は?

以上が成立の経緯ですが、新生大和ハウスリート投資法人(8984)としては、第22期(2017年02月期)が初めての決算ということになります。そのため、第21期(2016年08月期)では、合併前の2つの投資法人がそれぞれ決算を行うという形です。今回は、それぞれの業績を追うと相当に長くなりますので、説明資料の24ページに掲載されている次期第22期(2017年02月期)の業績予想から見ていきたいと思います。

今後の見通し

(単位:百万円)
第22期
(2017年2月期)

第23期
(2017年8月期)

予想 予想 前期比
営業収益 17,360 17,576 +215
営業費用 12,005 11,198 △807
営業利益 5,354 6,378 +1023
経常利益 4,219 5,190 +971
当期純利益 4,219 5,190 +971
内部留保取崩額 2,921 1,980 △940
一口当たり分配金 4,700円 4,720円 +20

2016年9月に取得した6物件の通期化により第23期には、増益となります。この6物件は、8ページに記載がありますが、スポンサーである大和ハウス工業のパイプラインから取得とあります。6物件の平均鑑定NOI利回りは、6.1%です。商業施設の利回りが比較的高くなっています。大和ハウス工業からの合併お祝いといったところでしょうか。なお、平均鑑定NOI利回りというのは、不動産鑑定評価書による物件価格から計算した利回りということです。

また、上記の業績予想の営業費用には、のれん償却費が1982百万ずつ含まれています。この負担があるため、実のところ、真の分配金は、第22期が2,777円、第23期が3,416円となっています。これに、上記表の赤文字で表示しました内部留保取崩額を上乗せしているのです。

なぜこうなったかといいますと、以前、野村不動産マスターファンド投資法人(3462)でも説明しました合併によって生じた「正ののれん」が、今回のこの法人の合併でも生じているからです。

【2月決算REIT】合併続きの野村不動産マスターファンド投資法人(3462)、のれんに注意!

簡単に、言ってしまうと、旧大和ハウスリート投資法人から取得した物件の時価純資産に対し、会計上の取得企業(新生大和ハウスリート投資法人)による取得価額が上回ると正ののれんとなります。今回旧大和ハウスリート投資法人の物件は、鑑定評価額で取得しているので、時価純資産を上回っています。26ページには、この「正ののれん」を20年にわたって償却すると書いてありますね。

(※時価純資産≪NAV≫とは、資産を時価評価(鑑定評価)したものから、借入金や投資法人債などの負債を時価評価したものを差し引いて算出します。)

この償却をそのままにしておくと、分配金が一気にダウンしてしまうので、利益超過分配を行って穴埋めを行うのですが、大和ハウスリート投資法人(8984)は、大和ハウス・レジデンシャル投資法人として、「負ののれん」を持っておりましたため、これを取り崩して穴埋めに充当しています。これが、先ほどの内部留保取崩額というものです。

冒頭で、破綻したニューシティ・レジデンス投資法人を合併吸収したと書きましたが、いってみれば救済合併なので、お安く取得しているのですが、この際に生じた「負ののれん」が17,884百万あったのですね。

当面は、「正ののれん」を「負ののれん」で相殺穴埋めし、巡航ペースの4,720円分配を継続するとしています。「正ののれん」は、今後20年かけて償却をし、「負ののれん」がすべて取り崩し終わった以降は、野村不動産マスターファンド投資法人(3462)と同様に、利益超過分配を行います。

上記のことは、投資家としては、評価が分かれるところですが、規模拡大で運営が安定すると考えるのであれば、ポジティブでしょうし、特に、大和ハウス・レジデンシャル投資法人のホルダーであった人は、せっかくの「負ののれん」を半分、旧大和ハウスリート投資法人にもってかれたようなものだと言って売却した人もいるのではないでしょうか。

いずれにしましても、今回の合併で、Jリート市場でトップレベルとなった規模を活かした運営をすることで、投資家の評価を得ていくことが必要となるでしょう。

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