Real Estate Investment Trust
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今回は、双日株式会社、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメント、アジリティー・アセット・アドバイザーズ株式会社の3社がスポンサーとなっている日本リート投資法人(3296)を取り上げます。

日本リートって、this is japan的な法人名なのに、スポンサーは双日以外カタカナ文字が並んでいるね。どのような経緯で設立されたのか気になるなあ。

エイブルから始まる生い立ち

日本リート投資法人(3296)の源泉は、エイブル(8872)から始まると聞くと、意外でしょうか。

エイブルと言えば、賃貸仲介ショップを運営している会社ですから、皆さんもお世話になったことがあるかもしれません。

エイブルは、リーマンショック以前の2006年当時からリプラス・レジデンシャル投資法人のスポンサーの一角でした。

リプラス・レジデンシャル投資法人は、株式会社リプラス、株式会社エイブル、株式会社ハウスメイトパートナーズ、その他いくつかの管理会社などで、会社名だけ見ると、ちょっとした賃貸ビジネス連合です。

しかし、2007年になると仲間割れを起こしたのか、次々とスポンサーから脱落し、とうとう株式会社リプラス単独の体制となりました。

一方で、エイブルは、同時期に、エイブル保証、CHINTAIなどを主要スポンサーとして、エイブルリート投資法人の上場を目指していました。

当時、賃貸仲介系の法人がリートに参入することはトレンドの一つで、スターツCo(8850)は、2005年にスターツプロシード投資法人(8979)を上場させ、アパマンショップHD(8889)も当時の東京グロースリート投資法人(今のインヴィジブル投資法人)の資産運用会社の親会社である(株)パレックスの全株式を所有するなどの動きがあったのです。

今でもその名前とともに残っているのは、スターツプロシード投資法人(8979)だけだねえ。

アジリティー・アセット・アドバイザーズの憂鬱

しかし、エイブルリート投資法人は、2007年12月に上場取りやめとなってしまいます。

当時はすでにサブプライムローン問題の影響で併せてリートを売却する投資家などがおり、リート市場も低迷する中、新規上場銘柄についても、確実に公募価格割れするだろうと言われていたからです。

一方で、投資法人の運営会社として、2005年に、エイブルらは、不動産ファンド事業を始めるため、アジリティー・アセット・アドバイザーズを設立していました。

また、エイブルリート投資法人を運用するエイブル・インベストメント・アドバイザーズも設立しておりましたが、エイブルリート投資法人の上場取りやめにより、その存在は宙に浮いた格好になっています。

このエイブル・インベストメント・アドバイザーズの蜃気楼が、やがて日本リート投資法人(3296)の運営会社である双日リートアドバイザーズ株式会社へと移り変わっていくは、まだ先の話です。

クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの日本進出

双日リートへとつながるもう一つの潮流があります。

クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、1917年に設立された米国イリノイ州・シカゴに本部を置く総合不動産サービス会社です。

長い歴史の中で2018年に上場するまでは、世界最大の非上場株式会社となっていました。

日本に上陸したのは、1997年です。不動産の賃貸や管理、売買仲介まで手掛けていましたが、アセットマネジメント業務へと進出するにあたり、Jリートに深い関係のあった、ある企業を買収します。

それは、2009年3月に経営破綻したパシフィックホールディングスの私募ファンド運用部門、パシフィックインベストメントです。

パシフィックホールディングスといえば、平成不動産バブルとともに現れ、サブプライムで傾き、最終的には中迫ジャパンの出資するしないに沈んだ不動産会社でしたね。

その破綻により、傘下の日本レジデンシャル投資法人、日本コマーシャル投資法人は、スポンサーを失いました。

【リート今昔物語】不動産ファンド会社の度重なる破綻劇に揺れる投資法人たちの行く末

そして、買収したパシフィックインベストメントを社名変更し、日本におけるアセットマネジメント業務を開始したのが、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメントです。

つながりましたか?

2つの投資法人を失ったパシフィックの名残が名前を変えて再びリートの世界に戻ろうとしていました。

双日リートの誕生

さて、再びアジリティー・アセット・アドバイザーズに視点を移します。

エイブルリート投資法人の上場を取りやめたことにより、エイブル・インベストメント・アドバイザーズは、アジリティー・アセット・アドバイザーズの傘下として、存続しておりましたが、2009年にポラリス・インベストメント・アドバイザーズ株式会社へと名称変更しています。

アジリティー・アセット・アドバイザーズが、同年、エイブル傘下から抜けたことによるものです。

また、同じ時期、双日株式会社内では、アセットマネジメント部が設立されていました。

双日株式会社では、従来から不動産サービスを手掛けていましたが、アセットマネジメントへも進出しようと考えていたのです。

そして、2010年には、アジリティー・アセット・アドバイザーズと協議を始め、私募リートの運用を開始しています。

ゆくゆくは上場を目指し、双日としては、他の大手商事会社が上場リートのスポンサーを手掛けているのを横目に、自分もという思いがあったとかなかったとか。

また、アジリティー・アセット・アドバイザーズとしても、かつて果たし得なかった投資法人の上場への思いもあったのかもしれませんね。

ついに上場

そして、2014年、元パシフィックインベストメントのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメントを加えた3社スポンサー体制により、日本リート投資法人(3296)がついに上場となります。

その際、運営会社として、アジリティー・アセット・アドバイザーズ傘下のポラリス・インベストメント・アドバイザーズを商号変更してできたのが、双日リートアドバイザーズ株式会社です。

エイブル・インベストメント・アドバイザーズがポラリス・インベストメント・アドバイザーズになり、さらに双日リートアドバイザーズへという流れとなりました。

上場されなかったエイブルリート投資法人や今はなき日本レジデンシャル投資法人、日本コマーシャル投資法人たちの屍を超えて、以上、双日がカタカナ株式会社とともに、Japanとして旗揚げした経緯になります。

もし、エイブルリート投資法人が上場していたら? パシフィックHDが存続していたら? どうなっていたかなあ。

アジリティー・アセット・アドバイザーズとは

最後に少し文中で触れられなかったことの付け加えです。

アジリティー・アセット・アドバイザーズは、設立以来、アセットマネジメント事業と不動産投資アドバイザリー事業に従事していますが、2018年には、ホールディングス体制に移行し、業務範囲を拡大させています。

また、2016年7月にシンガポールを本拠とするフィリップキャピタルグループの出資を受け入れ、傘下入りし、シンガポール、ベトナムなど東南アジア諸国へと、その活動範囲も広げているところです。

ちなみに、フィリップキャピタルグループは、1975年からシンガポールを拠点に、世界17の国と地域で金融サービスを提供している巨大総合金融グループです。

身近なところでは、フィリップ証券で口座開設して、シンガポール株などを購入している人もいらっしゃるかもしれませんね。

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