Real Estate Investment Trust
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利回りランキング上位常連のインヴィンシブル投資法人(8963)を取り上げたいと思います。投資口価格は、30年度も7月中旬から下落傾向となっており、配当の利回りも7%台にのっていますし、優待も創設したという銘柄です。

実は、このインヴィンシブル投資法人(8963)、スポンサーや資産運用会社の顔ぶれも設立当初からいろいろで、他の銘柄にはないとても複雑な変遷をたどって来ており、現在も話題を事欠きません。

今回は、この投資法人の少し細かすぎる経歴をたどってみたいと思います。

インヴィンシブル投資法人(8963)が出来るまで

インヴィンシブル投資法人(8963)は、もともと東京グロースリート投資法人という名称で、2004年に13番目の投資法人として、大阪証券取引所の不動産投資信託市場に上場されています。当時、大証へのJREIT上場は初でした。その後、東証へ鞍替えしています。

発行投資口数は9,000口、公募価格は1口につき39万5,000円ということで、主として東京および東京周辺都市部に立地する住宅、集合住宅またはオフィス等を投資対象としている点が特徴でした。

(株)東京リート子会社の(株)東京リート投信が運用を行い、その後、東京リートは、パレックスと名を変え、東京リート投信は、グロースリート・アドバイザーズに名を変えているようです。2007年にアパマンショップホールディングスがパレックスを子会社化し、グロースリート・アドバイザーズは、アパマンの孫会社になっています。ちょっとマニアックな情報ですね。

エルピーシー投資法人との合併

2010年には、住宅系を中心に運用を行う外資系リートエルピーシー投資法人(親会社米LPC)と合併。両法人とも運用資産が小さく、リーマン後の今後の運営に行き詰まり感がでておりましたため、生き残りをかけていたわけです。

ちなみに、合併後の運用は、資産運用会社コンソナント・インベストメント・マネジメント(株)が行っていますが、かつてはエルシーピー投資法人の資産運用会社をしていました(エルシーピー・リート・アドバイザーズからコンソナント・インベストメント・マネジメントに商号変更)。

東京グロースリート投資法人の運用を手掛けていたグロースリート・アドバイザーズは、その後ひっそりと解散して消滅します。

続く2011年には、フォートレスインベストメントグループの子会社であるCalliope合同会社を通じて、コンソナント・インベストメント・マネジメント(株)の株式を取得し、100%子会社としたのですが、2017年には、ソフトバンクグループ株式会社がフォートレスインベストメントグループを買収し、子会社化ということが起きました。

米Fortressがインヴィンシブルの新スポンサーに、資金調達にもめど(日経不動産)
https://tech.nikkeibp.co.jp/kn/article/nfm/news/20110715/548598/

ソフトバンク:フォートレス・インベストメントの買収手続き完了(bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-12-27/P1N0KG6TTDS001

このことにより、フォートレスインベストメントグループの傘下にあったインヴィンシブル投資法人(8963)は、さらにソフトバンクグループ株式会社の傘下へと漂流することになったのです。そして、資産運用会社コンソナント・インベストメント・マネジメント(株)の株主は、現在、Fortress CIM Holdings L.P.が8割、ソフトバンクグループ株式会社が2割となっています。

こうした経緯から、現在のインヴィンシブル投資法人(8963)は、非常にソフトバンクグループ色の濃いものとなっています。

 

ホテルに活路

さて、合併後のインヴィンシブル投資法人(8963)ですが、合併した両法人ともに行き詰った者同士が一緒になってのスタートであっただけに、非常に前途多難な船出となりました。第15期から17期までに、経常赤字を計上し、1口当たりの分配金も地を這う展開が第22期くらいまで続きました。

正直いいまして、あとはどこかの法人が骨を拾うしかないというのが当時の投資家目線であったと思います。この法人がギリギリのところで活路を見出したのは、ホテルを次々と取得していったところからです。当時は、ホテルの稼働率が上昇し、オリンピックも決定ということで、ビジネスや観光ホテルを次々と取得しています。

ビジネスホテルや観光ホテル物件は、景気に左右されやすいアセットですから、やはりホテル専門リートでの運用がよいのでしょうが、この投資法人にとっては、そこが最後の生き残り策であったように思います。

なぜホテルに?

そして、なぜホテルであったのか。これは生き残り策でもあり、フォートレスインベストメントグループ傘下であったインヴィンシブル投資法人(8963)としても当然の流れでありました。

もともとフォートレスインベストメントグループは、投資会社であり、日本国内では子会社を通じて、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(2013年取得)やマイステイズホテル(2012年買収)などの不動産への投資と運用を行っていたことから、これらの両物件を中心に、インヴィンシブル投資法人(8963)がホテルリートへと生まれ変わっていったのです。

そのホテルリートへの生まれ変わり感の徹底ぶりは、押し込まれ感すらあったものですから、当時のベテランリート投資家にとっては、なかなかに買いづらい銘柄になっていったのだと思います。外資系のリートが自身のスポンサーの投資案件を押し込まれるだけ押し込まれて、リーマンとともにスポンサーが日本から撤退するルートは、すでにいくつもの投資法人が通ってきた道です。

ちなみに、フォートレスインベストメントグループの日本における他の子会社に、レジデンシャル・サービス・ジャパンがあります。これは最近よくテレビで宣伝されていますが、敷金礼金ゼロ円のビレッジハウスの運営会社です。大家の敵、入居者の味方のように映るCMですが、もともとは、旧雇用促進住宅(かつて雇用保険事業の一つであった雇用福祉事業により整備された勤労者向けの住宅。平成33年度までに譲渡・廃止することが決定されている。)をフォートレスインベストメントグループの合同会社が落札して取得した物件を賃貸に出しているものです。

どうなる今後のインヴィンシブル投資法人(8963)

さて、以上が長すぎるインヴィンシブル投資法人(8963)の歴史でしたが、これからの投資法人運営はどうなっていくのでしょう。もともとフォートレスインベストメントグループは、外資系です。インヴィンシブル投資法人(8963)に全部ホテル物件を売却して、いざまた経済危機が来た際には、投資法人という箱に損失だけ残し、グループとしては引き揚げていくというストーリーが私の頭の中にずっとあったわけです。

ですが、ソフトバンクグループがフォートレスインベストメントグループを子会社し、資産運用会社の株主に名前を連ねてきたことで、このインヴィンシブル投資法人(8963)劇場は、今後どのように展開されるのでしょうか。

ソフトバンクグループ傘下だけど安心できない理由

米当局、ソフトバンクに業務制限 投資会社買収で 中国との関係警戒(産経ニュース)
https://www.sankei.com/world/news/180406/wor1804060007-n1.html

上記のニュースで言われていることは、フォートレスインベストメントグループを傘下に収めたソフトバンクグループが対米外国投資委員会(CFIUS)から投資会社の業務運営への関与に制限を受けているという情報です。つまり、ソフトバンクグループは、フォートレスインベストメントグループを子会社にしたけれども、経営に関与することは制限され、所有しているだけになっているということのようなのです。

このことと、ソフトバンクグループが直接コンソナント・インベストメント・マネジメント(株)の株式を2割所有していることと関係があるのかは分かりません。また、今後また未曽有の経済危機が訪れたときには、フォートレスインベストメントグループが単独の経営判断で日本をバイバイすることも可能であるのかもしれません。

フォートレスインベストメントグループ周りの動向もいろいろある

ただ、一方では、2018年に入って、米大統領補佐官であるクシュナー氏の会社に資金提供を行ったり、ほかにもフォートレスインベストメントグループがソフトバンクグループから知的財産活動費用として4億ドルの資金提供受けていたりと、尻尾ふりふりな同行も報道されています。

クシュナー氏不動産会社にフォートレス融資-NJ州高層ビル開発資金(bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-24/P31G6N6K50XT01

そもそもソフトバンクグループが対米外国投資委員会(CFIUS)から業務関与の制限を受けているのも、アリババの大株主であることから、中国との関係を疑われているのが一因という報道も出ていますから、クシュナー氏、知的財産活動というワードが火消しの材料に映るのも自然のことでしょう。

こうしてみると、フォートレスインベストメントグループがいつまでもソフトバンクグループの傘下にいるのかといったところも気になるポイントかと思いますし、投資するよりも見ていた方が面白い銘柄だと私が思っている所以です。

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