Real Estate Investment Trust
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今回は、リートにおける圧縮積立金についてです。このワードは、リートの説明会資料や貸借対照表などを見ていると、見かけますよね。

また、当ブログの各投資法人の業績checkでもたびたび取り上げています。

積み立てたり、取り崩したり、何をやっているのかなあと思われた方もいるでしょう。リートの貴重な内部留保を生み出す制度でもありますので、押さえておきたい事項ですね。

この記事では、リートの内部留保を生み出す圧縮積立金を説明するね。

圧縮積立金とは

圧縮積立金とは、圧縮記帳の経理方式の一つです。そもそも、圧縮記帳とは、税務上、当期の利益を少なく計上する(圧縮する)ための会計処理のことをいいます。

圧縮記帳を用いてその年度の利益を圧縮することのできる場合については、法人税法もしくは租税特別措置法に定められています。

リートに関係する事項では、以下のとおりです。各投資法人のリリースを読んでいきますと、それぞれの法律に基づいて、圧縮記帳を行うが記載されています。

交換による取得 法人税法第50条
※最近の事例 スターツプロシード投資法人(8979)
http://www.sp-inv.co.jp/file/news-b49ef41579c7b6cdc7080fc45b293be6697429aa.pdf

特定資産の買換え等による取得 租税特別措置法第65条の7
※最近の事例 森ヒルズリート投資法人(3234)
http://www.mori-hills-reit.co.jp/LinkClick.aspx?fileticket=jMDUgwfDkP0%3d&tabid=144&mid=411

平成21年及び22年に土地等を先行取得した場合の特例 租税特別措置法第66条の2
※最近の事例 オリックス不動産投資法人(8954)
http://www.orixjreit.com/file/news-035126879554e40da0e02d5f610f470c2d7bab6b.pdf

圧縮記帳は、本来、課税を繰り延べるための会計処理です。免税制度ではなく、翌年度以降のいつか、課税されることになります。一方で、リートの場合は、利益のほぼすべてを分配し、実質無税となるわけですから、課税の繰延ではなく分配の繰延という効果になります。

次は、圧縮記帳した結果、どういう経理処理になるかという話です。





直接減額方式と積立金方式

以下は、最近の日経マネー記事です。

不動産高騰で警戒モード REIT運用は安定重視に(マネー研究所)
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO15432470Y7A410C1000000?channel=DF280120166576

17年3月にスターツプロシード(SPI)は保有2物件の売却を発表したが、その売却益である約1.5億円弱のうち、約1.3億円は同時期に取得した物件の圧縮記帳に用いることを明らかにした。この物件の取得価格は3.8億円だが、圧縮記帳によって簿価は2.5億円まで下がるとしている。(マネー研究所)

圧縮記帳の経理方式には、以下の2つがあります。

直接減額方式 固定資産の取得価格を直接減額し、これを固定資産圧縮損として費用計上する。

積立金方式 固定資産の取得価格減額はせず、積立金として積み立てる。

上記記事のスターツプロシード投資法人(8979)の場合は、簿価は2.5億円まで下がるとしていますから、直接減額方式であることがわかります。

リートでよく見られる不動産の買い換えでは、積立金方式が多いと思います。一方で、交換の場合は、不動産の価値が上昇した段階で交換したということなので、キャッシュで現金を得たわけではありません。

こうしたキャッシュ利益のない交換の場合は、積み立てるのではなく、直接減額方式をとるのが自然ということでしょう。

ですから、上記日経マネーの記事の続きに「REITが簿価の引き下げに走っている」とか「このようにREITは不動産価格の高騰を警戒し始めている」と書かれていますが、このことと今回のスターツプロシード投資法人(8979)の件を直接つなげるのは、少々微妙なところではと思っています。

安定重視という方向性の結論としては、まあ、そうなんでしょうとは思いますが。

圧縮積立金の効果

少し脱線しましたが、圧縮積立金は、翌年度以降に取り崩しをして、分配金に積み増すことができます。こうした制度がないと、不動産の売却益を当該期に全部分配することになりますから、分配金に波が出てしまいます。

であれば、積み立てておいて、テナントの退去などで分配金が減少してしまうときに補填したりした方が投資家に安定的なインカムゲインを提供することになります。

実は、リートの場合、特定資産の買換え等による取得(租税特別措置法第65条の7)により圧縮積立金とすることも多いのですが、この措置が平成29年3月31日までの期限付でした。

不動産の取引を活発化させようという趣旨でもありましたので、その目的が達せられたとすれば、終了を想定する制度なのです。

ですが、リートにとっては、貴重な内部留保の手段ともなっており、不動産証券化協会(ares)は、平成29年度税制改正要望に制度の延期を強く要望していました(8ページ参照)。結果、これは平成32年度まで継続となったようです(そしてさらに令和5年度まで延長)。

https://www.ares.or.jp/polrec/pdf/zeisei_youbou29_1115.pdf

このように、圧縮積立金を上手く使えるかどうかは、投資法人の安定運営にとって、非常に大事なところでありますから、各投資法人がどのようにこの制度を使っているのか、注視していく必要があろうかと思います。

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