Real Estate Investment Trust
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最近、投資家界隈でにわかにFIREという用語が話題となっていましたが、メディアにも取り上げられるなど、FIREって何? と興味を持ち始めた方も多いのではないでしょうか。

FIREとは「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の頭文字をとった造語ですが、欧米の20〜30代の間でこの「FIRE(ファイア)」という読み方の早期リタイアがムーブメントになっており、これが日本にも伝わってきたものです。

このように若くしてFIREした人=「FIREの民」というワードもあるようです。

とはいいましても、若くして起業し、その会社の経営に邁進する中で、タイミングをみて会社を譲り渡し、まだ自分が動けるうちにリタイアして、残された時間を有効に活用するといったことは、海外でも当然にあった考え方ですよね。

これまで、日本でも早期リタイアが語られてこなかったわけではありません。特に、現物の不動産投資家の間では、最終的な目標として、セミリタイアのことは大いに話題にされてきた事柄です。

昨今話題となっているFIREという考え方が今までと少し異なるのは、主に株式投資によって、経済的な自由を得るということと、早期リタイアという目標を一般人の目線にまでぐっと近づけたことだと思います。

ときに、よく象徴的だと思うのが、FIREの目安として年間支出の25倍の貯蓄額(投資元本)を持つことがあげられていますが、この支出として、総務省による家計調査の消費支出(総世帯・2019年平均)である1世帯当たり年間299万円が用いられていることです。

昨今のFIRE界隈では、この299万円の25倍である約7,500万円がFIREの目安として言われることが多いようです。

このあたり、個人差があると思いますが、生活費の年299万円というのは、少なくはありませんが、多くもありません。月額換算で25万円ですから、そんなに贅沢できる金額でもありませんので、ある程度の節約生活が必要だと思います。

つまり、昔からある早期リタイアというのは、起業して一発当てて優雅なリタイア生活を送ろうというものであったのに対して、昨今の日本におけるFIREというのは、ある程度の生活水準を目途として、一般人でも可能なリタイアを目指すということになります。

ですが、このFIREというものは、欧米の投資環境が下地になっていますので、そのまま日本の投資環境に置き換えたとき、いくつか注意すべき点があると思います。

この点を見過ごすと、思わぬ落とし穴に入ってしまうこともあるのではないかと思いますので、今回は、にわかに盛り上がりつつあるFIREについて、注意すべき3つのポイントを取り上げたいと思います。

その3つの前提は、年間299万円、年間支出の25倍、投資元本といった前提です。

年間299万円という世帯支出の想定

はじめに、注意しておきたいのは、年間299万円という世帯支出の想定のことです。

先ほども申し上げましたが、世帯生活費の年額299万円というのは、少なくはありませんが、多くもありません。子どもを含めた3,4人世帯を想定すると、逆に足りないとも言えます。

世帯の状況や目指す生活水準によって上下させることが本来かと思いますが、様々な場面でこの水準が取り上げられるのは、ある程度低めの資産でもリタイア可能である内容の方が万人受けするからではないかと考えます。

特に、メディアなどで取り上げる際には、 1人世帯や2人世帯の事例が多く、その傾向が強いように思いますね。

また、1人世帯の場合が最も生活費の工夫が自由にできますので、例えば、4人世帯を想定した場合は、ハードルの高さがまるで異なってくることには、注意が必要です。

例えば、1人世帯と子どものいる4人世帯では、必要となる費用も規模もまるで違いますから、それぞれのご自分の世帯の状況を将来も見据えて、FIREの条件を考えることが必要です。

家族の生活ということも考慮に入れた場合、働き手の担う責任の重さがまるで違いますね。

子どもがいる場合は、子どもの人生のイベントである学費なども考慮しなくてはなりませんし、現在2人世帯であってまだ若い方々の場合は、将来子どもができたときの想定も必要でしょう。

こうした情報は、例えば、学費でしたら、文部科学省の調査がでています。

例:小学校から高校の学費
すべて国公立 約541万円
すべて私立  約1,830万円

こうした情報をもとに試算していくことが必要です。

また、人生は老後までのことも考えなければなりません。2019年、金融庁が「夫婦世帯で老後2000万円の資金が必要」という報告書を作成したことも記憶に新しいことです。

そして、たとえ、年間299万円という世帯支出の想定を前提とした投資元本7,500万を達成したとしても、夫婦の双方が納得していない状態では、FIREすることはできないでしょう。

例えば、せっかくリタイアして自由な時間を得ることができるとはいえ、どの程度の水準の生活を送りたいかということです。

このあたりは、夫婦といえども、価値観は違いますから、夫婦の意思をある程度すり合わせることが必要になってくるのです。

もちろん、だからといって、1人世帯サイコーということを書きたいわけではありません。

家族を持つことで得られる時間や経験はぜひ得てほしいと思っていますので、こうしたことにかかるお金を前提に考えていきましょうということです。

株式は7%で成長するという前提

昨今のFIREの条件として、「年間支出の25倍」が共通の指標となっています。つまり、先ほどの年299万円を基準とした場合、約7,500万円の貯蓄額(投資元本)がFIREの条件となります。

この理論には、米国の株式市場がこれまで年間平均7パーセントの成長率を続けてきたことを基礎として、そこからインフレ率3パーセントを差し引き、4パーセントという理論上の値が基準となっています。

海外の先進国市場では、株価は長期的に上昇し続けるという考え方が基本にあります。バブル崩壊、失われた30年と言われている日本からすると、違和感があるかもしれません。

実際、日本では、日経平均が2021年に30年ぶり高値を付けたばかりでありますから、30年投資し続けてようやく元に戻ったという市場です。

一方で、米国市場では、史上高値を更新という言葉が躍っているとおりです。こうした相場をもとに、欧米伝来のFIREという考え方が成り立っていることにも留意が必要です。

米国市場の指数などに投資するとか、日本市場の今後に期待するなど、投資手法は様々あれど、FIREでは、株式投資で利益を上げていくことがもとになっています。

つまり、そのことを前提として、ほったらかし投資とか、簡単投資ということではなく、知識や経験を積み重ねながら、投資を進めていく必要があると考えています。

インカムゲインを中心とした組み立て

早期リタイアを目指すには、起業して成功してリタイアというルートを除くと、これまで、日本では、不動産投資が最適と考えられてきたように思います。

その理由として、日本では、低成長時代に突入して以降、長年低金利が定着し、不動産投資のためのローンが非常に低金利で提供されてきたことです。

あまたの銀行がアパートローンという定型ローンを提供したこともあり、サラリーマンにとっての参入障壁が低くなったこともありましたが、昨今では今までどおり融資を出す銀行が減少し、門戸が閉められつつあります。

そして、昨今盛り上がりつつあるFIREでは、株式投資による収益が前提となっています。

しかしながら、皆さんは、米国市場はともかく、日本市場をイメージした場合、株式投資が長期的に利益を安定してもたらしてくれるものであるという印象はあるでしょうか。

もちろん、米国市場に投資することは一つの方法だと思います。そして、それは重要なアセットの一つであることは間違いありません。

ですが、米国株式を中心に据えることに不安を覚える人もいると思います。

それは、米国市場が海の向こうにあることや身近にある企業が限られていたりして、投資対象が見えにくいことにあるのではないでしょうか。

当ブログでは、身近な日本での投資を考えるにあたり、インカムゲインをもたらすアセットとして、やはり元来実践されてきました不動産投資、その中でも、株式投資の1種であるリートの組み入れをおすすめしています。

例えば、4%ルールにおいて、インフレ率1%に対して5%の投資効果を目標にした場合、分配金だけで4,5%が達成可能なアセットがあれば、一気に角度は上がるでしょう。

インカムゲインによる収益は、キャピタルゲインという値上がりを目的とした投資と組み合わせることによって、安定性や確実性を高めてくれるからです。

リート投資がFIRE(早期リタイア)に最適である3つの理由!

【リートの選び方】初めてのリート(不動産投資信託)の選び方おすすめポイント3つ

支出の25倍の貯蓄額としての投資元本

年間支出を299万円として、その25倍である貯蓄額7,500万円がFIREの目安とした場合、この貯蓄額というのは、投資元本のことを指しています。

株式投資では、投資元本が変動することが前提となっていますので、例えば、株価が下落して投資元本が、例えば7,500円と設定したFiRE基準を下回った場合は、再び働きに出るのかどうかを決めておかなければなりません。

サイドFIREという考え方もあります。平日に完全就労するのではなく、週1日や2日という感じで、リタイヤ資金を補完しながら、働く。逆に週1日2日以外の日は働かないというリタイヤですね。

株式投資を前提としたリタイヤである以上、投資成績が低下した場面を想定して、一部また働きに出ることも想定しておかないと、いざ出撃したいとなっても、気持ちが全然ついてこないとか、そもそも働き口がないということもありえます。

出勤するという気持ちがいったん切れた状態からもう一度戻すことができるでしょうか。

長らくリタイヤしていた人に、社会は再び就労の機会を快く与えてくれますか?

少し脅かすようなことを書いて恐縮ですが、株式市況の変動でリタイアの前提が崩れるような水準でFIREするくらいなら、初めからサイドFIREにしておくなど、方法を考えることも大切だと思います。

FIREのための投資で注意すべき3つのポイント

ここまでのポイントをまとめると以下のようになります。

  • 必要生活費は一律「年間299万円」ではなく、自分の世帯状況に応じて試算する。
  • 株式投資で利益を上げ続けるという前提を疑い、リートによるインカムゲイン投資を取り入れる。
  • 投資元本の毀損を想定する。
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