Real Estate Investment Trust
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最近、投資家界隈でにわかにFIREという用語が話題となっていましたが、メディアにも取り上げられるなど、FIREって何? と興味を持ち始めた方も多いのではないでしょうか。

  • FIREとは「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の頭文字をとった造語ですが、欧米の20〜30代の間でこの「FIRE(ファイア)」という読み方の早期リタイアがムーブメントになっており、これが日本にも伝わってきたものです。

昨今、実際にFIREを達成した人の書籍が続々と出版されており、テレビなどのメディアでも取り上げられる勢いです。

そして、お気づきかと思いますが、FIREを達成してメディアに出ているケースは、見た限り独身男性が出演しているものが多く、それ以外のケースでは、共働きの二人世帯が取り上げられています。

つまり、子育て世帯がFIREを目指していたり、実際に達成している、いわゆる「子持ちFIRE」の事例はでてきません。

「子持ちFIRE」は、世帯の人員が増えるわけですし、そもそも子育てをしながら活動することになりますので、そのあり方も含めて、とても難しいことだと思っています。

今回は、子持ちFIREはなぜ難しいのかについて、考えてみたいと思います。

テーマは、入金力と教育費、そして生き方です。

入金力の問題

FIREは、もともと欧米の20〜30代の間でムーブメントとなっているものですから、そもそも若い頃から経済的自立と早期リタイアを目指すという考え方です。

ですから、必然的に一人世帯や二人世帯という、人生これからという若い世代が活動の主体となっています。

投資は、スタートが早ければ早い方が良いと言われることもありますが、若くして始めた方がより有利になる可能性が高いので、時間軸からしても正しいことでしょう。

若くして投資に携わるということは、投資の経験が早く積みあがっていくという観点もありますが、最大の利点としては、入金力だと思います。

投資をするにあたっては、当然ですが、元となる種銭が必要になるわけですが、この種銭をいかに主戦場に積み上げることができるか、それが入金力となります。

入金力という観点から、一人世帯や共働きの二人世帯に比べて、子育て世帯はどうかということをイメージしてみてください。

子育て世帯になると、出産費用から始まり、子育て環境の整備、場合によっては、引っ越しも必要になるでしょうし、成長するにつれて習い事や教育費といった毎月の固定費も積みあがってきます。

こうした中で、投資に回せる資金は、減少していくことはやむを得ません。必然的に、子育て世帯になる以前の状態の方が入金力が高いことになります。

投資にとって重要なポイントである入金力を維持することの難しさは、子持ちFIREの課題の一つ目です。

子どもの教育費

次に難しい問題だと思いますのは、子育て世帯に必要な生涯貯蓄額の見込み方です。

FIREの実践者の間で一つの定説となっている基準が「年間支出の25倍」です。

例えば、総務省による2019年の総世帯平均による1世帯当たりの平均支出額は、年間299万円とされていますが、この金額に25を乗じると、約7,500万円となり、この程度の投資元本があれば、早期リタイアしてもよいという考え方になります。

また、併せて、生活費を投資元本の4パーセントにおさめることができれば、資産を目減りすることなく暮らしていくことが可能だというのが「4パーセントルール」です。

FIREの目安である年間支出の25倍の貯蓄額(投資元本)を計算するにあたり、悩ましいのが教育費かと思います。

子どもがどのような道を辿って成長していくのかは、予測できるものではなく、例えば進学先としての大学一つとっても、国立なのか私立なのか、仕送りの有無でかなりの違いがあります。

また、昨今では、幼稚園から小学校、中学校や高校でも、私立に通う可能性すらあります。

これら進学に伴い通うことになるかもそれない塾などのこともあります。

もちろん無い袖は振れないということもあるのですが、子どもの可能性を考えたときに、予測が難しいとはいえ、できる限り多くの金額を見込んでおいてあげたいと思うのが親心ではないでしょうか。

こうしたことから、単純に「総務省による2019年の総世帯平均による1世帯当たりの平均支出額」の4人世帯分をもとに計算しておけばよいという問題ではないということになります。

実際、日本にFIREを広めることになった「FIRE  最強の早期リタイア術」の著者もご夫婦の二人世帯でした。

彼らも著書の中で、子を持つ世帯から相当の指摘を受けたということを書いています。

文中、学費は賢い選択をすれば、抑えられるとし、例として、世界中を子どもと旅をして暮らすワールドスクーリングの事例を出しているのですが、日本の読者からすると、違和感のある内容だったと思います。

それは、子どもの教育に関することが、それぞれの社会の文化や家庭の考え方一つで、異なることが当然だということを表しているのでしょう。

また、そこに踏み込むのであれば、一章では足りず、一冊まるごとの文量になると思います。

そして、やはり子どもの教育費は、そのご家庭の状況や考え方に応じてケースバイケースに見込んでいく必要があります。

また、先ほどもふれましたが、子育て世帯にかかる費用は、特に教育費を中心に見込みにくく、一定の貯蓄額を満たしたとしても、本当に大丈夫かという心配は尽きません。

これもまた親心と言っていいかもしれませんし、親としての責任感と言い換えてもいいかもしれません。

それが二つ目の難しさです。

生き方の問題

さて、最後に少し哲学的な話になってしまうかもしれません。

子どもを育む世帯にとって、親がどのように活動し、生活するかということは、子どもの成長にとっても、非常に関係のあることだと思います。

単に貯蓄があれば、親は働かずにいても良いかということは、親自身の人生や子の教育に関する考え方にもよると思うからです。

つまり、親が子どもと生きるうえで、どのようにふるまい、社会とかかわり、日々のサイクルを回していくかということは、親として子どもに伝えていく生き方の問題ではないでしょうか。

この点は、いろいろな考え方があり、意見が様々なところかと思いますが、子育て世帯において、FIREを考えるうえで、親の満足だけで判断してしまってよいのかという観点です。

親が早期リタイアをすれば、子どもと関わる時間が増えることから、子どもにも良い影響があるということはよく言われることですが、それだけでしょうか。もしかすると、一つの側面ばかりが見えてはいませんでしょうか。

そこに夫婦の間の考え方の擦り合わせという要素を加えると、問題はそう簡単ではありませんね。

子育て世帯において、親が早期リタイアをするということは、子どもの年齢にもよりますが、大人だけの問題ではありません。

そのあたりの影響をよく話し合っておき、子どもの成長にとって、より良い方向に歩んでいけるように考えていく必要があると思います。

これが3つ目の難しさです。

子持ちFIREを目指すことの意義

さて、子持ちFIREが簡単でないことをここまで並べたところですが、わたしは、それでも子持ちFIREは目指す意義がないとは考えていません。

FIREには、いろいろな形があるからです。

それぞれの家庭にあったFIREのあり方を目指し、親にとっても子どもにとっても良い形でFIREできることが何よりです。

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