Real Estate Investment Trust
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Jリート(REIT)の高利回り銘柄における見かけ上の利回りについて、前回はインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298) を取り上げました。今回は、見かけ利回り第2位のスターアジア投資法人(3468)の決算を読んでみましょう。株探では、12/21終値94,600に対し、利回り6.44とされています。

スターアジア投資法人(3468)平成28年7月期(第1期)決算説明会資料
http://starasia-reit.com/file/ir_library_term-0dbbc78ed2a9318cc1e168ab9d67d570fa0ac636.pdf

スターアジア投資法人(3468)の平成29年1月(第2期)の業績予想では、当期純利益+716百万の1口あたり分配金3,046円とされています。ですが、上場して間もないこの法人は、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298) のように物件を売却していませんから、売却益による増益ではありません。

第1期決算の7ページにある表のうちコメント「第2期予想業績の主な変動要因(対第1期実績比)」を見てみますと、「営業外費用の減少」で+693百万円となっています。これは、上場時の一時的な費用が第2期ではなくなることの費用減です。

こうしたことにより、増益となり、分配金が跳ね上がるわけですが、続く第3期は、当期純利益939百万の減益が予想されています。この理由は、7ページ表のコメント「第3期予想業績の主な変動要因(対第2期予想比)」を見てみます。

固都税の費用化開始 △166百万円」とありますが、これが大きいですね。この「固都税の費用化開始」とは何でしょうか。第2期にはなかった費用がなぜ第3期から開始されるのかといったところが重要です。

固都税の費用計上の仕組み

Jリートは、収益を得るためにオフィスビルなどの物件を取得しますが、これには固都税がかかります。税金ですね。自宅などの不動産を購入された方は、わかるかと思いますが、皆さんが家を取得された場合にも、市町村から納付書が送られてきますから、支払っているかと思います。

普通、不動産を取得した場合のその年度の固都税は、すでに不動産の売り主さんに通知されており、支払っている場合が多いですから、それは取得した時期によって按分清算して、買主から売り主に支払っています。そして、翌年度からは、買主あてに通知が来ますから、買主が支払いますね。

この固都税を費用として計上するということは、自宅であれば、普通費用として計上できませんから、問題にはなりません。一方で、その物件がアパートなどの事業用の不動産であれば、固都税は費用計上して確定申告します。

ですが、物件を取得した年度は、売り主が支払ったものを買主は精算金として支払っていますから、租税公課として費用計上はしません。通常は、物件の取得価格に含めます。つまり建物を100万で取得し、固都税が10万だった場合、物件の取得価格は、100万ではなく、100+10=110万として固定資産台帳に計上します。

そして、この110万を物件の耐用年数(例えば22年)で割った1年分を毎年費用として計上していくことになります。つまり、初年度の固都税相当額は、満額が費用計上されないのです。

では、JREITの場合

と、少し長くなってしまいましたが、7ページ表のコメント「第3期予想業績の主な変動要因(対第2期予想比)」における「固都税の費用化開始 △166百万円」とは、こういうことを念頭に認識していただければ思います。もし解釈が違ったらすみませんが、japan-reitにも以下のとおり書いてありますので、結果としては、誤りではない思います。

固都税の繰延効果
http://www.japan-reit.com/yougo/%E5%9B%BA%E9%83%BD%E7%A8%8E%E3%81%AE%E7%B9%B0%E5%BB%B6%E5%8A%B9%E6%9E%9C

J-REITの場合、取得年度の固都税は精算金として簿価に算入され翌年の納付時期から費用計上を行う。従って年前半に取得した物件の固都税の費用化は1年以上遅れて発生することになる。費用化が始まるまでの期間は固都税分の収益が嵩上げされるという繰延効果を持つことになる。

そして、第2期は固都税を含めなかった結果であり、繰延されていた固都税の費用化が始まる第3期からが巡航だと考えてよいことになります。つまり、続く第4期の分配金水準は、何もしない限り第3期からそんなに上振れることはないと予想できます。

なので、スターアジア投資法人(3468)の本当の利回りは、第3期の分配金2,726円×2を巡航として、5.7%(12/21終値94,600に対し)ということになります。

ただ、22ページを見ていただくと、「目標:2020年までに、2,000億円の資産規模を目指す」とありますから、物件取得をしていく可能性が高いように思えます。ですから、今後のスターアジア投資法人(3468)は、どういった形で物件を取得していくのかが焦点となってくるでしょう。

分配金を増やしつつ規模拡大を図るには、低金利での借入金をおこすのが最も効果的だとは思いますが、21ページにありますように、第2期末の想定総資産LTV(借金比率)は45.2%とあります。これは、2016年上期の全JREITにおける平均LTV44.2%よりもすでに高い水準です。

増資による物件取得と分配金の維持をどのように進めていくかを見定めたいところです。特に、こちらのスターアジア投資法人(3468)のスポンサーは、スターアジアグループとなっていますが、HPには、「スターアジアは、優れたリターンを投資家の皆様に提供することを最大の目的に、主に日本の不動産関連資産に投資を行う、非上場、独立系の投資運用グループです。」とありますが、、、よくわからないうちは、見定めるといきたいところですが、みんなが見定めている間は、利回りが高いのも確かですから、好利回りとなっているワケでもあります。

長期的には、リーマンショック時にスポンサーが弱いところは売りたたかれたことも念頭に置きつつ、です。

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