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今回は、japan-reit.comの利回りランキングで、上位につけているトーセイ・リート投資法人(3451)を取り上げたいと思います。

この銘柄は、ずっとここ最近利回りの上位に位置し続けていますので、その理由を考えていきたいと思います。

アレ? ここ、何か問題があるんだった?

トーセイ・リート投資法人(3451)の業績は?

はじめに、この投資法人は、当ブログでも過去に1回取り上げたことがありますので、よろしければチェックください。

【4月決算REIT】相場軟調時の公募増資となったその結果は? トーセイ・リート投資法人(3451)の業績をcheck!

お読みいただければ分かると思いますが、悪い評価はしていないと思います。当時の記事にもありますように、「上場当時からの物件もそれなりの収益性のある物件をトーセイ案件から持ってきた」という印象でした。

とはいえ、公募増資のタイミングが芳しくなく分配金が下がる増資となっていることは気になると結んでおりましたが、この点は、また後ほども触れていきたいとは思います。

では、最新の決算第12期を見てみましょう。

(単位:百円)
第11期 第12期
実績 実績 前期比
営業収益 2,996 3,097 +101
営業利益 1,501 1,532 +31
経常利益 1,244 1,259 +15
当期純利益 1,243 1,258 +15
一口当たり分配金 3,696円 3,697円 +1

いかがでしょうか。先ほどの過去記事の第4期決算からも順調に収益が伸びていますね。

物件の稼働率も上場以来安定しています。2020年8月末に「関内トーセイビルの大口テナントが2020年8月末に退去」していますが、一部埋め戻した後、稼働率も90%台となっており、全体の業績への大きな影響もないようです。

あと、決算説明会資料9ページですが、第12期に解約となったテナントの月額賃料合計は、同期に新規契約したテナントのそれとほぼ差し引きゼロということで、よく対応しているのではないでしょうか。

第12期の決算説明会資料
https://tosei-reit.co.jp/file/top-d575097e8b9810e0a27236b3bffc55dc58ecab09.pdf

ここまで見てきた限りでは、特に利回りが上位になるほどの落ち度はないかとも思いますが、どうでしょうか。店舗の賃料減免及び支払猶予要請などもありますが、ほかの投資法人にも同様のことは起きているレベルかと思います。

なので、業績が安定しており、分配金も上昇しているので、利回りも高いという見方もできます。

なら、投資口が買われて価格も調整されるはずだけど?

スポンサーは同じ名字

さて、ここからは少しスポンサーのことから見ていきましょう。スポンサーは、トーセイ株式会社(8923)ですね。同じ名字のまさしく親です。

なお、スポンサーというのは、親とも言われ、投資法人に大きな影響力を持ちます。詳しくは以下の記事です。

Jリート(REIT)の仕組み

投資法人をサポートする立場にあるので、影響力があるのは当然ですが、ときには影響及ぼし過ぎではというくらいの物件を押し込んでくることもあります。

こうした物件取引は、スポンサーにとっては良い取引であっても投資法人にとってそうであるとは限らず、利益相反取引と言われます。

これは、jリートの制度上のリスクとして、投資家としても目を光らせておきたいポイントなのです。

トーセイ株式会社 (toseicorp.co.jp)

ちなみに、トーセイ株式会社は、実質山口誠一郎氏が創業した不動産会社です。リーマンショックを乗り越えて、2011年に東証一部上場企業となりました。ビル管理からマンション分譲、戸建て分譲を経て、不動産流動化事業、不動産証券化事業参入ということで、のちにリートへの参入に至る不動産会社としては美しいというか、なるべくしてきた感があります。

山口誠一郎氏は、三井不動産販売出身で、トーセイグループをここまでの規模の会社に仕立て上げた凄腕な方ですね。スポンサーであるトーセイ株式会社の業績にも特段の問題は見られません。

トーセイが後場上げ幅を拡大、20年11月期営業利益及び配当予想を上方修正(株探)

最近のインタビュー記事は以下です。

トーセイ 社長 山口誠一郎「中小オフィスへの影響は限定的」 | 激震! 不動産 | 特集 | 週刊東洋経済プラス (toyokeizai.net)

リーマンショック時は、大型ビルの賃料が大きく下がった一方で、中小ビルはもともと賃料水準が低いこともあって、あまり変動がなかった。コロナ禍においても、賃料下落で厳しくなるのは中小ビルよりもむしろAクラスやSクラスのビルのほうではないか。(2020.7.4 toyokeizai.net)

書籍も出されています。

 

トーセイ親子

トーセイ株式会社はとてもしっかりとした事業展開がされているようですが、次に、投資法人との関係を見ていきましょう。

2019年10月、トーセイ・リート投資法人(3451)は、トーセイ株式会社を相手とした第三者割当による大型増資を実施しています。そして、この増資によりトーセイ株式会社より12物件を取得しました。

この増資は、投資口が18.9%増となる規模でしたし、内部留保を30百万円取崩しつつ、増えた分配金もたった100円だったということで、嫌な雰囲気だったということがあります(最終的には、内部留保取り崩しは取り下げた。)。

トーセイ・リート投資法人が投資口追加発行、12物件を取得(japan-reit.com)

続いて、2020年11月にも4物件流れてきています(分配金177円上昇)。前よりは少し分配金の上昇幅もアップしましたね。これらの物件の取得で、分配金は上がっていますが、上昇幅もなかなかコントロールされている感じがするというのは、個人的な印象です。

実際、物件を売るのもトーセイ、買うのもトーセイですから、親子のどちらに利益を取らせるかは、トーセイ側がコントロールできるとすれば、投資家側としては、なんだか面白くない感じもします。

つまり、この投資法人は、トーセイグループの一角として、物件の引き受け手としての役割を務めていくことが求められているのです。

ちなみに、本投資法人は、以下の記事にも書いておりますが、公募増資のタイミングが悪く、以前ディスカウント増資となったことがあります。

こういう時は、市況を見てやっぱり増資やめますということもできますが、トーセイ親子の場合は、子は引き受け手として、親の都合もあると思いますので、なかなか難しいところだろうと思います。

足元のトーセイリート投資法人の1口あたり出資額は、107,439円で、最近の投資口価格108,000円付近で公募増資した場合は、そんなに分配金の上がる感じでもありません。

【リート考】リートにおける良い増資(PO)と悪い増資の見定め方。

こういう点が気になる投資家からは、敬遠されるでしょうね。先日もリート最大手が急落していましたね。
REIT最大手が急落 「季節外れ」増資に疑問の目(日本経済新聞)

なぜ利回りが高いのか

はじめに業績を見ましたとおり、業績がいいので分配金が安定し、利回りが高いという見方もできますが、一方では、スポンサーとの関係について、リスクであるという見方をするのであれば、この投資法人に集中投資というは、厳しいという判断になるのでしょう。

そういう観点から、スポンサーとの関係や最近の公募増資の状況なども振り返ってきましたが、最後に、以下のニュースを見ておきたいと思います。

トーセイ・リート投資法人が第11期決算、第三者割当増資を発表 – JAPAN-REIT.COM (japan-reit.com)

2020年6月には、スポンサーであるトーセイを割当先とする第三者割当増資を発表し、発行口数は4,000口、投資口数9.12%を保有する筆頭投資主となりました。

スポンサーとのパイプラインを強化するとのことでしたが、これも同じように投資家目線では、トーセイがより担保してくれる感である一方、投資法人としては言うことをより聞く必要性が高まるということです。

そういうことで、良くも悪くもこの先もトーセイ株式会社にうまく管理されてやっていくんだろうなあという感じがするのですが、それはやはり良くも悪くもなんだと思います。

そのほかの要因ということですと、格付けがないので、日銀の買い入れの対象にもならず、機関投資家とか手を出しにくいということもありますかね。

まあ、とにもかくにも、いろんな意味で、上手く運営されてると思うのですが、でもなんだか燃えないなあという感じはするのでしょう。

比較的分配金は安定しているので、ポートフォリオの一角には入れておいていいと思うんだけど、いろいろと注意は必要だね。

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