Real Estate Investment Trust
manshon
 

毎週土曜日には、【Jリート考】と称しまして、リート投資家の方が今後のリート相場を考える上での材料となりそうな記事などを紹介しておりますが、今回は【決算check】ということで、先日リリースされましたアドバンス・レジデンス投資法人(3269)の決算説明資料を見ていきたいと思います。アドバンス・レジデンス投資法人(3269)は、Jリート最大の住宅系リートですから、旗艦銘柄として、やはり確認しておくべき決算かと思っています。

2015年7月期(第10期) 決算説明資料
http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/next-week-tokyo-stock-idJPKCN0RB0MC20150911

昨今、オフィス統計において稼働率の改善がみられておりますが、4ページでは、アドバンス・レジデンス投資法人(3269)の7月期の稼働率は96.6%となっており、2013月7月の時点と同じ数字となっています。その意味では、住宅系リートにおいては、不景気時の稼働率はオフィスに比べるとあまり大きな問題とはならないことがわかります。不景気になると人の働くところの需要は減少しますが、住むところの需要は、人が生きていく限り劇的には変化しないことからです。

ただ、これは現物不動産投資においても強く意識されていることですが、日本はやはり人口減少社会ですから、徐々に需要が減退していく流れであることは間違いのないところであります。

なお、資料9ページにもありますとおり、賃料の増減率は、前期1月にようやくプラスに転じていますので、入居者の入れ替え時に家賃を上げて借り手が見つかっているケースが増えてきたことになりますので、この点はホッとできるところかと思います。その細かい内訳は、10ページに掲載されています。

次に、5ページですが、分配金は、4,572円ということで、売却益のあった前期2015年1月よりも減であり、2014月7月と比べても若干の減となりました。また、続く2016年1月は、4,530円、2016年7月は、4,540と安定はしていますが、贅沢を言いますと、投資家としてはどうしても、もっと上を期待してしまうわけであります。この決算がリリースされてからしばらくは、軟調な投資口価格の推移が続いておりましたが、これが影響しているのかもしれません。

また、同じ5ページで、1口あたりのNAVは上昇しています。以前の記事でも取り上げましたが、NAV=REITの資産-REITの負債でした。
【Jリート考】NAV倍率を考える。現在、NAV倍率も高い、配当利回りも高い、NOI利回りも高いのはあの銘柄。
2013年1月には、158,313円だったのが、今期7月は207,496円にまで上昇しています。これは何が変わったのでしょうか。資料にも書いてありますが、「(各期末現在の純資産額+各期末現在の含み損益−各期に係る支払分配金総額)÷各期末発行済投資口数」で算出しています」となっていますから、おそらく「各期末現在の含み損益」が増えているものと思います。そのあたりの詳細は、17ページも参考になります。

ただ、この含み損益というのは、景気によっても変動していくわけですから、景気の良いときは、上昇していき、悪い時には減少ということもありますので、どういう要因で含み益が増えているのかという点も重要かもしれません。よい物件が増えてきたからなのか、ただ景気がよいだけなのか。また、長期的に運用することを考えれば、ほかの要因でのNAV上昇というところ、借金が減少すれば、純資産額も増え、NAVも上昇します。

続いて、最も重要なところです。今後の外部成長戦略ということで、15ページから掲載されているところですが、特に東京都心の物件の利回りは、採算が困難なところにまで下がったと言われて久しいところであります。ここから分配金を上げていくのは、なかなかに難しいということが、今後の分配金予想にも表れているのではないでしょうか。賃料を上げていくということだけでは、なかなかに厳しいということもありますし、建築費、特に人件費が上がっているということですから、賃料が上がっても運営コストも同時に上昇しているという状況が想像されます。そのあたり24ページでその一辺が読み取れるかと思います。

現物不動産投資において、好景気時には、実はあまり利回りが上がっていくようにはなりません。それは、好景気で運営コストが上がるわりには、賃料が劇的に上昇するということは、あまりないからです。少なくともオフィスに比べて、変化が大きいということはありません。また、いまは好景気時かつ低金利となっていますから、物件の購入希望者が多く、都心では物件の価格が高騰し、十分な利回りをとれる物件の供給がかなり細くなっております。このことも昨今の住宅系の不動産投資の苦しいところとなっています。そのあたりの事情をこのアドバンス・レジデンス投資法人(3269)の決算を見るにあたり、併せてイメージしていただくとより理解しやすくなるところかと思います。

とはいいましても、この物件の良さは安定感ですし、なんといっても負のれん銘柄でありますから、長期的に付き合っていってよい銘柄である点に変わりありません。

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