Real Estate Investment Trust
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不動産ファンド会社のパシフィックホールディングスをご存知でしょうか。

同社は、2004年に日本レジデンシャル投資法人、2006年に日本コマーシャル投資法人を相次いで上場させた不動産ファンド会社です。

その2社とも、のちにそれぞれある投資法人に吸収されていくことになります。

今回は、度重なるスポンサーの倒産劇に揺れた投資法人の行く末を取り上げていきたいと思います。

平成不動産ファンドバブル

平成不動産ファンドバブルは、2005年から始まって2007年7月に終わったと言われています。リーマンショックは、2008年9月ですから、終焉はその約1年前です。

不動産ファンド会社として急成長を遂げたクリードという会社があります。その会社によると、2007年7月頃から不動産市況が急激に悪化したとされており、それは不動産価格が下落し始めたということです。

2009年1月には、クリードが破綻、2月には日本綜合地所、3月には、パシフィックホールディングスが続き、大型の不動産会社が次々に倒れました。

なお、クリードが破綻前夜に傘下のリートをいちごグループホールディングスに手渡していたことは、以下の記事をご覧ください。

【REIT今昔物語】リーマンとともに現れたいちご系投資法人(8975,3463,9282)達は、何処へ行く。

ちなみに、不動産ファンドバブルと言われるほど、急成長のビジネスモデルであった不動産ファンド事業とはどういうものでしょうか。

不動産ファンド事業というのは、借入金を元手に、オフィスビルなどの不動産物件を購入し、内外の金融機関や外資系ファンドなどの投資家に資金を募って組成した不動産投資ファンドに転売して収益を得るものです。

そして、当時の不動産ファンド会社は、その多くを米国の金融機関や外資系ファンドからの資金に頼っていたと言われており、その資金の流入がサブプライムローンの焦げ付きが炎に広がっていく過程で、完全にストップし、すでに始まっていた不動産市況の悪化と相まって、一気にとどめを刺したのです。

不動産ファンド会社たちの破綻劇とリート

パシフィックホールディングス(旧パシフィックマネジメント)は、1995年に創業され、不動産コンサルティング業務等から、2000年には不動産投資ファンド事業へと進出しました。

2003年には東証第2部に上場、2004年に東証第1部に指定替えということで、そこからは、まさに2005年からの平成不動産ファンドバブルに乗って急成長した会社です。

不動産市況が悪化する2007年までに間、2004年に日本レジデンシャル投資法人、2006年に日本コマーシャル投資法人を相次いで上場させています。

そして、サブプライムローン問題によって資金の流入が急激にストップし、不動産市況が急激に悪化するにつれて、資金繰りが悪化してゆきました。

保有不動産の売却を進める一方で、新たなスポンサーの確保に乗り出しましたが、2008年7月には大和証券グループ本社との間で、資本参加で合意、その後、解消となるなど、あがき続ける中、2008年9月には、リーマンショック勃発となります。

そして、その翌月、リート初となるニューシティレジデンスの破綻が起き、次はどのリートが続くのかという次のリート探し状態が始まります。

まさに、このような時期に誰がリートに投資をするのか、という事態になりました。しかし、その時に買って鬼ホールドした投資家は確実に利益を得たことも確かです(わたしも当時日本コマーシャル投資法人などを買いましたが、分配金利回りは15%をくだりません。)。

さて、11月、不動産会社モリモトが破綻します。ビ・ライフ投資法人という居住系リートのスポンサーでした。投資法人自体の破綻ではありませんでしたが、スポンサーである親が倒れるという、リートの新境地に突入しました。

ここからは、リート市場にとって、なかなか厳しい状況が続きます。翌年1月には、不動産ファンド会社クリードが破綻。クリードオフィスリートのスポンサーでした。こちらは、破綻の前月にいちごHDへ手渡していましたので、ギリギリセーフ。

額の汗をぬぐう暇もなく、3月には、パシフィックホールディングスが破綻となり、日本レジデンシャル投資法人、日本コマーシャル投資法人の2つの法人が親をなくすという事態になりました。

当時のリートを含めた不動産業界の惨劇が伝わりましたでしょうか。このほかにも、2008年には、リプラス、レイコフ、ランドコムといった同じく不動産投資ファンド会社が立て続けに黒字倒産しています。

リプラスもリプラスレジデンシャル投資法人の単独スポンサーでしたから、いかにリートが投資家にとって不安な投資先になっていたかが分かります。

【REIT今昔物語】日本賃貸住宅投資法人(8986)、日の丸賃貸ビジネス連合の船出と終焉。

次は誰が倒れるのか、大手のダヴィンチか、というどこから誰が倒れてくるのか、もう分からなくなっていました。

3月危機が始まった–受注半減!!倒産列島・日本を歩く(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/2903

パシフィックホールディングスの破綻とその後

パシフィックホールディングスは、3月末に迫った返済期限840億円の返済が出来ず、資金繰りに窮し、倒産に追い込まれたのですが、前年7月には、大和証券グループ本社からの資本参加を得るとのリリース、11月には、中柏ジャパンから476億円の資金を調達するとのリリースで、なんとか破綻を免れる可能性がありました。

しかし、おりしも9月のリーマンショック勃発で、大和証券が撤回し、中柏ジャパンの資金の出し手であった中国連合的な人たちも消え、破綻の道へと進んだのです。

特に、元産業再生機構最高執行責任者冨山和彦率いるコンサルティング会社である経営共創基盤の関わった中柏ジャパンが結果的にパシフィックホールディングスの息の根を止めることになった一連の話は、以下がとても参考になります。

消えた資金調達話~パシフィックHD倒産の舞台裏(NetIBニュース)
https://www.data-max.co.jp/2009/03/post_4849.html

ということで、残された子どもたちである日本レジデンシャル投資法人と日本コマーシャル投資法人は、新しい親となるスポンサーを探すべく奔走します。

日レジとADRが合併へ、日本最大級の住宅系REITに(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-10427220090806

日本レジデンシャル投資法人8962.Tとアドバンス・レジデンス投資法人(ADR)8978.Tは6日、合併することで基本合意したと発表した。(2009.8)

日本コマーシャル、丸紅系REITと合併(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO06133790S0A420C1EE1000

丸紅が不動産投資信託(REIT)の日本コマーシャル投資法人を、系列のユナイテッド・アーバン投資法人と合併させる方針を固めたことが明らかになった。(2010.4)

かくしてなんとか綱渡った2つの投資法人でしたが、正式に新たなスポンサーが決まるまでの間、投資家たちが不安定な心持ちに置かれたことは間違いありません。

当時の個人的なポジションでいいますと、アドバンス・レジデンス投資法人(3269)と日本コマーシャル投資法人を保有していましたので、結果的には、一方は存続法人で負ののれんゲット、一方は、親ができてホッとしたという感覚でしたが、非常に危ない投資であったことは間違いありません。

【リートの基本】Jリート(REIT)の超重要要素「負ののれん」とは。

スポンサーの破綻、ピンチからチャンスに?!

リートにとってスポンサーは、運営会社の大株主であり、物件のパイプラインを担っていることも多く、かなめ的な存在です。そのスポンサーが破綻することはリートにとって少なくともプラスではありません。

しかし、リートでは、構造上、運営会社のスポンサーと投資法人はあくまで別法人であり、スポンサーが破綻しても投資法人が連動して破綻することもありません。

くしくも、この一連のスポンサーの破綻劇がリートにおける倒産隔離機能を実証する機会となったのです(倒産隔離機能の詳細はこちら)。

パシフィックHD破綻後に、傘下REIT日レジの価格上昇の理由
https://diamond.jp/articles/-/2189

パシフィックが会社更生法を申請した3月10日時点の日レジ投資口価格は39950円で、最安値の35350円から4600円高く、もはや上昇局面にあり、その後もほぼ一貫して上昇し、5月14日の終値では179800円と最安値の5倍以上の価格となっている。本来スポンサーの影響を大きく受けるREITにもかかわらず、なぜスポンサーである親会社が破綻した後に投資口価格が上昇していたのだろうか。(diamond 2009.5)

その背景には、パシフィックホールディングス破綻後、運営会社の引き受け手が国内勢4社に絞り込まれたと報道がでていたということもあります。

つまり、スポンサーが破綻したり経営基盤が危ない企業から、安定した企業に受け渡されることの期待です。

そして、今回の場合、既存の投資法人を傘下に持つ企業が手を挙げたことにより、投資法人の合併という非常に良い結果(規模拡大、負ののれん発生)も生まれました。

このように、ピンチがチャンスに変わる可能性のあるリートの再編ですが、場合によっては引き受け手であるスポンサーによっては、不透明さが増すというケースもあり得るわけですので、投資家としては、銘柄選択でしか、対応手段を持ち合わせていないのです。

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