Real Estate Investment Trust
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さて、今回は12月の次期決算を見据えて、春先のリート市場を賑わしたインヴィンシブル投資法人(8963)の大幅減配の件を整理して記録として残しておこうと思います。

我らがフォートレスの旦那の件です。

フォートレスの旦那、再び

ご存知フォートレスの旦那のといえば、米大手投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループのことですね。リートとの関連でいえば、2010年、今は亡きDAオフィス投資法人のスポンサーであるダヴィンチホールディングスとの関係に始まりました。

【REIT今昔物語】生き続けるダヴィンチと新たなリートの動き。

そして、2011年、インヴィンシブル投資法人(8963)のスポンサーとなり、そのまた親がソフトバンクグループであることは、投資家の皆様のよく知ることかと思います。

【REIT今昔物語】インヴィンシブル投資法人(8963)、買収した外資をさらに買収したあの日本法人の登場で米国をまたにかけた複雑な状況に。

その前身である東京グロースリート投資法人は、集合住宅またはオフィス等を投資対象にしていましたが、フォートレス・インベストメント・グループが引き継ぎ、リーマンショックで受けた深い傷から生き残るため、高リスク高収益であるホテルのアセットへと大きく舵を切りました。

そして、同じく参加のマイステイズホテルマネジメントの運営するマイステイズホテルやシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルなど大型の投資を次々に進め、インヴィンシブル投資法人(8963)は、そのアセットの引き受け手として、ホテルリート中№1の資産規模にまで発展するなど、コロナ禍に巻き込まれるまでは、まさに予想を超える復活劇であったと思います。

ソフトバンクGのフォートレス、日本で4000億円の不動産投資を計画 – Bloomberg
日本の賃貸経営に黒船、米投資会社が見つけた商機 – WSJ

しかし、2020年3月のホテル需要が震災後以来の低迷となる中、恐れていたニュースが出てきました。恐れていたというのは、インヴィンシブルにとってというよりも、リート業界にとっての問題です。

インヴィンシブル、分配金98%減 ホテル需要減で:日本経済新聞 (nikkei.com)

不動産投資信託(REIT)のインヴィンシブル投資法人は11日、2020年6月期の1口あたり分配金(株式の配当に相当)が19年12月期に比べて1695円(98%)少ない30円になる見通しだと発表した。(2020.5.11)

投資家のひんしゅくを買った契約変更

インヴィンシブル投資法人がマイステイズと業務委託契約変更 | HotelBank (ホテルバンク)

契約における賃料の支払条件を一部変更して固定賃料の支払いを免除するとともに、変動賃料の計算方法を変更し、同ホテルグループが従来負担していた対象物件に係る物件管理費の負担緩和を図り、同投資法人の負担とするとともに、同ホテルグループに対して支払う管理業務受託手数料の金額をホテル営業を継続するために必要な金額として別途合意する金額に引き上げることについて合意するもの。(2020.5.12)

変更の内容としては、マイステイズホテルマネジメントを一方的にインヴィンシブル投資法人が支えるものでした。このこと自体は、いわば大家が店子を一時的な災害から助ける措置ともいえるわけですが、問題と考えられるのは、この両者の親会社が同じフォートレス・インベストメント・グループであることでした。

REITが遺したホテル投資の教訓 | 激震! 不動産 | 特集 | 週刊東洋経済プラス (toyokeizai.net)

インヴィはMHMに対して、宿泊料収入などに連動して受け取る変動賃料のみならず、固定賃料約35億円も免除した。見方によっては、フォートレスがMHMの損失の一部をインヴィに押し付けたとも解釈できる。(2020.7.4)

まさにこのニュースが指摘していることですね。つまり、インヴィンシブル投資法人にとって利益に相反することを親会社の意向ということで飲ませた結果、投資家が不利益を被るという事態になりました。こうしたJリートにおける利益相反の問題は、過去にもJリートの制度的な課題とされてきた事柄でしたので、過去よりリート投資に携わってきた人たちは、またかと思ったわけです。

利益相反とは

ちなみに、Jリートにおいて、利益相反とは、投資家利益と投資法人のスポンサー利益との相反を指すことをいうのですが、中でも、2010年に森ビル株式会社が森ヒルズリート投資法人に対して実施した毀損増資による分配金の大幅減事件は、わかりやすい利益相反の事例です。

当時の森ビル株式会社の保有する物件を投資法人に取得させるために、相場環境がよくないとわかりながら公募増資に踏み切って、大幅なディスカウント増資となった事例でした。このため、分配金が大幅に減少したため、こうした投資法人とスポンサーとの関係が問題視され、しばらくの間リート相場は低迷し、ほかの投資法人も安易に公募増資することができなかった時期があったわけです。

その時のことは、当ブログにも書いており、昔の記事は削除してしまいましたが、以下の記事にも触れられていますので、ご参考ください。

森ヒルズリート投資法人について/アイビー総研 関 大介 – JAPAN-REIT.COM (japan-reit.com)

Jリートでは、仕組み上、投資法人の親であるスポンサーの意向が反映されやすいことから、そのリスクを前提とした銘柄選びが必要です。それは一目で判断できるものではなく、今回のような対応からその銘柄の傾向を把握していくしかありませんが。

しかし、インヴィンシブル投資法人の場合は、、、

とは言いましても、今回の件について、まったく投資法人の非のみを取り上げるわけではありません。インヴィンシブル投資法人(8963)がもともと高リスク銘柄であることは、投資家の周知のことだったと思います。2011,2012年当時、投資口価格が1万円を切るくらいであったものを一時8倍以上まで上昇させるには、運営側としても、それなりのリスクをとってきたということですし、先ほどの東洋経済の記事にも以下のような指摘があります。

この騒動は利益相反だけでなく、REITとホテル運営者の関係性にも一石を投じる。通常、ホテルが生んだ収益はREITと運営者で分け合う。だがインヴィの場合、収益のほとんどを吸い上げ、MHMの手元に残さない契約だ。

インヴィンシブル投資法人(8963)は、むしろ今まで上記記事のような仕組みで大いに利益を受けてきたということですし、親であるフォートレス・インベストメント・グループとしても、投資法人を優先させて利を取らせるという判断だったのでしょう。そして、今回も向かった矢印は180度反対になりましたが同様の判断だったと言えるのではないでしょうか。

とはいえでも、リート業界にとっては、よくはないですね。投資家に与える印象は最悪です。



 

フォートレスの旦那は今後どうするのか

さて、ここからは今後の話です。

コロナ禍に巻き込まれるまでは、フォートレスの旦那が活発なホテル戦略を展開していたことは、周知のことと思います。例えば、コロナ禍前夜である2019年度は、ホテル事業を軸に展開しているユニゾHDの争奪戦に白の騎士として張り切って参加した末に、最後に悪者とされたうえ、うっちゃりを食らうという話題をつくっています。

ソフトバンクG系ファンド、死んだふりから大逆襲:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

ユニゾ争奪戦、コロナが流れ変えた 最後に笑ったのは…:朝日新聞デジタル (asahi.com)

そしてこのコロナ禍です。本来であれば、まだまだ日本のホテルにたっぷりと投資していくという方針だったはずですが、方針転換はやむなしでしょうから、旦那の今後の投資先はどのようになるのでしょうか。

その手掛かりとなるのは、以下のような記事かもしれません。

「中低所得層向け住宅は手堅い」米投資会社フォートレス日本代表:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

足元ではコロナの影響が出ているものの、低成長ではありますが、安定はしている。こうした前提に立った上で、高齢者マーケットとアフォーダブル・ハウス(中低所得者向け住宅)を重要視しています。(2020.6.11)

フォートレスは、2017年に、西日本の雇用促進住宅を一括取得し、ビレッジハウスとして展開しています。これはまさに上記のコメントどおりのことです。以前は、受け入れが進んでいない外国人労働者への提供を進めていくと言っておりましたが、コロナで入国が制限される中、ますます上記のようなマーケットに注力していくのでしょう。

そのような中、直近では、以下のようなニュースが飛び込んできました。

ソフトバンク系ファンドの「優等生」フォートレスとは? 相乗効果でレオパレス復活の可能性 (msn.com)

違法建築問題で経営危機のレオパレスが、土俵際で踏みとどまった。ソフトバンクグループ子会社の米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」から総額572億円の出資と融資を受けて経営再建を目指すと発表したのだ。(2020.10.19)

こちらも一連の方針に沿った投資活動でしょうから、ホテルが痛手を受ける中、旦那としては住宅への投資にシフトしていくことになるものと思われます(そのためインヴィがどうなるかは未知数)。

ここに572億円出すなら、インヴィに出してよと思った投資家の方、フォートレスの旦那とつきあうには、上がるときは心地よく、落ちるときは冷たくという覚悟と割り切りが必要かもしれませんよ。

ソフトバンクGだけど、油断は禁物。

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