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利回りランキング上位(見かけ上)のいちごホテルリート投資法人(3463)を取り上げたいと思います。いちごオフィスリート投資法人(8975)いちごグリーンインフラ投資法人(9282)もいわゆる兄弟投資法人です。

これらのいちご系リートたち、特に、いちごオフィスリート投資法人(8975)が成立するまでの間には、外資系ファンドたちを交えた、今思えば見ごたえのある攻防戦がありました。当時の投資家は、ただ冷や冷やしていただけかもしれませんけどね。

今回は、そんな戦話にも触れつつ、いちごリートたちができるまでをたどってみたい思います。

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スポンサーのいちご株式会社(2337)とは

さて、いちご系投資法人の資産運用会社は、いちご投資顧問株式会社であり、その100%株主がいちご株式会社(2337)となっています。

このいちご株式会社(2337)は、もともと2001年に株式会社ピーアイテクノロジーと旧アセット・マネジャーズ株式会社が合併して設立されたアセット・マネジャーズ株式会社です。

このアセット・マネジャーズ株式会社が2010年に商号変更してできたのが、いちごグループホールディングス株式会社、さらにいちご株式会社(2337)ですから、新興の投資会社のイメージがかなりあるわけです。

ちなみに、株式会社ピーアイテクノロジーは、2000年設立の不動産ファンドなどの運営をしていた会社です。現在のスターマイカ(3230)の代表取締役が設立した会社でした。

旧アセット・マネジャーズ株式会社はリーマンに飲まれた

また、合併前のアセット・マネジャーズ株式会社は、こちらも設立2000年で、不動産投資業務を主軸とし、再生ファンド、IPOファンドを活用したM&A事業も進めているという会社です。設立時の代表は、古川令治氏。古川氏を含む日本長期信用銀行マーチャントバンキンググループ出身者が多数在籍していました。

ディスカウントショップ「キムラヤ」の企業再生や池袋西武(東京・豊島)の証券化の証券化など数々の実績を上げ、上海にも乗り込んでいましたが、リーマンショックの波に飲み込まれたところを、いちごトラストから第三者増資を受け、代表取締役会長にスコットキャロン氏を迎え入れるという形となり、2010年には、いちごグループホールディングス株式会社、2016年にいちご株式会社(2337)に商号変更となっています。

いちごトラストをはじめ、実はいろんなところにいるいちご達

不動産投資と企業投資というのは、当時最も荒波にもまれている分野でしたから、不動産は処分投げ、投資した企業は次々に倒産、中国も後退入りということで、どんな状態だったかは想像がつくはずです。そんな火中の栗を拾う形で、いちごアセットマネジメント株式会社代表取締役社長であったスコットキャロン氏が現れたわけです。

少し入りすぎますが、アセット・マネジャーズ株式会社に出資したいちごトラストは、ケイマン籍のSPC(special purpose company-特定目的会社)として、Ichigo Asset Management Internationalというシンガポール籍の投資会社に投資判断を一任し、このいちごアセットマネジメント株式会社は、2006年に創業、日本に特化して、Ichigo Asset Management Internationalに投資助言を行う業務を担っているようです。いちごトラストは、欧米の年金等を運用するユニットトラストであるとの情報があります。

なお、いちご株式会社(2337)の大株主の状況には、いちごトラストPTEという名称が載っていますが、いちごトラストの法人格を有さないシンガポール籍のユニット・トラスト(投資信託)であり、2010年に設立され、このPTEといちごトラスト自身は、過去と現在も含め大気社や東京鋼鉄(→阪和興業)、富士通、セイコーエプソン、チヨダ、日本製紙と名だたる企業の大株主として、ちょくちょく名前のあがる株主名となっています。

ちなみに、SPC(special purpose company-特定目的会社)ってなんだ、と興味のある方は以下です。

【リート考】特定目的会社、SPC、匿名組合出資、優先出資証券とは?

「いちご」の由来

誰もが、もしくは自分が最初に違和感を覚えたのは、いちごという会社名ではないでしょうか。いちごと言えば、果物の苺を連想する日本人がほとんどですね。それだけに、可愛いイメージになっていますし、それと不動産業は、真逆なイメージですから、何だろうと思うわけです。

これは、社のホームページにもありますが、一期一会の一期からとって、平仮名にしたという経緯のようです。であれば、一期一会株式会社とか一期株式会社という選択もあったと思いますが、平仮名になったことと最初の一期だけとってきたことで、違和感のある感じになっているのだと思うのですが、やはりそこはおそらく外国の方が考えたネーミングなんだろうなと思います。

いちご、Jリート市場に参入するまで

さて、少し話がそれましたが、このような投資体が、アセットマネジメント株式会社という箱を得て、いちごグループホールディングス株式会社(現いちご株式会社)とし、2008年にクリード・オフィス投資法人の資産運用会社であるクリード・リート・アドバイザーズの全株式を取得しました。これが正式なJリート市場への初参入です。

そして、それから、いちご不動産投資法人及びジャパン・オフィス・アドバイザーズ株式会社それぞれ名を変えながら、さらには、2011年、FCレジデンシャル投資法人の資産運用会社ファンドクリエーション不動産投信株式会社も同様として、両者を合併してできたのが、現在のいちごオフィスリート投資法人(8975)なんですね。

スコットキャロン氏とは

その主導役でもあるいちごアセットマネジメント株式会社のスコットキャロン氏とは、どのような人でしょうか。1994年以降、日本開発銀行 設備投資研究所 客員研究員、バンカーズ・トラスト・アジア証券会社東京支店、プルデンシャルplc日本駐在員事務所 駐日代表、そして、2006年いちごアセットマネジメント株式会社代表取締役社長ということで、昨年日経ヴェリタスで特集していた自身のコラムでも日本での社会人期間が28年と長く、2006年に日本の永住権を取得しているとのことです。

ですので、景気が回復したので、また戻ってきましたという外資系とは異なり、非常に日本のことをよく見てきた方だなという印象を持っています。ただ、いちごトラスト自体はどうなんだろうというのは、分かりません。

クリード・オフィス投資法人とは

さて、ここで少しクリード・オフィス投資法人のことについて簡単にご紹介します。この投資法人は、クリード株式会社(2001年大証ヘラクレス上場→東証1部へ)という不動産投資会社により2006年に上場となった投資法人です。ですから、おおよそリーマン前夜に船出をしたという遅かった投資法人というカテゴリに入るのではないでしょうか。オフィスビルを中心に投資を行う投資法人でした。

また、2007年には、子会社でCANDEO HOTELS(カンデオホテルズ)の運営を始めておりますが(2012年に価値開発がさらに売却)、名前を知っている人も結構いるのではないでしょうか。ビジネスマンにとっては、よいビジネスホテルですが、こちらは、2009年に価値開発の子会社に売却されることとなります。

ちなみに、価値開発株式会社(3010)は、もともと製糸業界大手の一角である会社を起源として、不動産業に移行し、リーマンで息切れ切れとなってから、ホテル業に活路を見出した企業です。リーマン当時は、いつ破綻するんだろうと思っていた投資家も少なかったはずです。

さて、このクリード株式会社自体は、投資法人をバトンタッチする翌月の2009年に倒産していますので、まさに倒産前夜にいちごグループホールディングス株式会社のもとへと移ったことになりますね。

FCレジデンシャル投資法人とは

次に、FCレジデンシャル投資法人ですが、こちらは、株式会社ファンドクリエーションが100%出資するFCリート・アドバイザーズ㈱が運用する法人でした。その名の通り、主に、住宅系のリートです。ファンドクリエーショグループ(3266)として、現在も健在です。

このファンドクリエーションは、2012年に設立された会社で、その名の通り不動産や証券のファンドを作って運用するアセットマネジメント事業を主に進めており、近年では、ソーラーファンドに力を入れているようですね。

 

仁義なき外資たちの争いのはてに

さて、FCレジデンシャル投資法人では、2010年に大投資口主エスジェイ・セキュリティーズLLCから、なんと解散要請を受けるという事件が発生します。実は、当時のFCレジデンシャル投資法人の周辺はかなりゴタゴタしていました。

ゴタゴタの影にプロスペクトあり

2007年当時、FCレジデンシャル投資法人の大投資口主でもあったプロスペクトは、スポンサーであるプロスペクト・レジデンシャル投資法人の資産運用会社の経営権譲渡で交渉を始めていました。

プロスペクトのカーティス・フリーズ会長は、自身のファンド、プロスペクト・アセット・マネジメントが投資するFCレジデンシャル投資法人に対しても、同様に新たなスポンサーを探すべきとの要請をしていましたが、ファンドクリエーションがこれを無視したため、プロスペクト側が投資口をさらに買い進めたというのが専らの噂です。

これにより、投資主の上位3者の保有割合が56%を超え、投資法人に法人税を実質課税しない「導管性」という50%ルールに反し、課税されるかも、ひいては、分配金が大幅減配になるかも、という事態になって、その当時Jリート界隈では割と大問題になったのです。

https://tech.nikkeibp.co.jp/kn/fa/free/column/20071026/512781/

結果的には、ファンドクリエーションがプロスペクト・アセット・マネジメントから一部投資口を買い取るということで、問題は回避されたのですが、昨今のJリートでは考えられないゴタゴタのキナ臭さがありました。もともとFCレジデンシャル投資法人は、当時不動産運用規模が198億円(帳簿価額ベース)ということで、当時の上場REITでは最小規模だったので、次の展開が難しいとみられていたのですね。

そして、いちご達とエスジェイ・セキュリティーズLLCの大決戦

そんなことがあったのち、2010年、ファンドクリエーショングループがいちごアセットトラストと資本業務提携を行い、いちごアセットトラストに対して第三者割当増資を実施するというニュースが出ました。

いよいよいちご達が戦場を変えて参戦したわけですが、その前年に、クリード・オフィス投資法人を傘下に収めていたということもあり、この住宅系のリートをどうするつもりだろうと、当時の投資家は判断に戸惑ったと思います。

ですが、このときは、これが大規模増資であったため、既存の投資口が大幅に希薄化するということで、エスジェイ・セキュリティーズLLCからの差し止め請求を受け、のちの解散請求へとつながっていきます。実際、発行済投資口数32,700口に対する発行新投資27,776口ということで、84.9%の増資ですから、さすがに希薄化半端ないでしょということで、必要性とのバランスで裁判所から差し止め仮処分の決定が出ています。

このあたりのキナ臭さは、当時投資家の間でもいろいろと噂が立っており、もともとエスジェイ・セキュリティーズLLCに投資口を売ったのは、プロスペクト・アセット・マネジメントでしたから、両者は、仲間で、プロスペクト側が導管性事件で、これだから外資系はという冷たい視線があったので、エスジェイ・セキュリティーズLLCに言わせたとか言わせなかったとか。

初戦に勝ったエスジェイ・セキュリティーズLLCから解散請求

このプロスペクト、実は、リーマンショックのおかげで当時結構な被害を受けていると言われており、ファンドとしては、2009年あたりに解散の方向で進んでいるとの情報がありました。そして、いちごアセット側からすると、大規模増資がだめなら、まあ、当時、ちょうどクリード・オフィス投資法人をゲットしていたということもあり、プロスペクトも静かになったので、エスジェイ・セキュリティーズLLCの解散請求に乗じて、合併という選択肢をファンドクリエーションに飲ませようということだったのかもしれません。

ファンドクリエーションは、当初合併については、収益のネタがなくなるのを恐れて前向きではなかったと言われていました。その妥協線が、大規模増資だったかもしれず、その道が絶たれたので、いちご達に、ほらねとかどうすんのとか言われたとか言われなかったとか。

このあたりのことはかなり憶測が入っていますが、結局、ファンドクリエーション自体は、その後、いちごトラストから出資を受けていますし、エスジェイ・セキュリティーズLLCの解散請求も、その後、33.24%保有の大株主となったIchigo Asset Management Internationalが跳ね除けています。

この解散騒動の際には、第3の大株主であるJPE Capital Managementに関して、いちごとエスジェイ・セキュリティーズLLCの綱引き合戦が繰り広げられていたそう。

ですが、最終的には、この戦いは、いちご軍団の勝利に終わり、FCレジデンシャル投資法人の合併について、ファンドクリエーションも首を縦に振ったというわけです。

いちごオフィスリート投資法人(8975)が生まれる

とまあ、そのような投資会社同士の大怪獣物語が繰り広げられつつ、2011年には、FCレジデンシャル投資法人をも飲み込んで、いちごオフィスリート投資法人(8975)となりました。合併契約の承認も無事得られたのです。

そして、その後、FCレジデンシャル投資法人の子はいらんとばかりに、住居系物件を売りに売って、合併時には、いちご不動産投資法人だった商号も現在のいちごオフィスリート投資法人に変更し、2015年に名実ともにオフィス特化型リートとなっています。

ここまで、合併前のどちらかの法人が所有していた物件を徹底して売るのは、ほかにはなかったかもしれませんね。そして、その勢いで、同年いちごホテルリート投資法人(3463)を上場しています。ここで、ようやくこの名称が出てきましたね。とても長かったです。

いちご達の心配どころ

さて、ここまで読んでいただければ、ひとえにいちごといったときに、いちごトラスト、いちごトラストPTE、Ichigo Asset Management International、いちごアセットマネジメント株式会社、スコットキャロン氏ということで、実にたくさんのいちごが出てくることがわかります。

28年間日本に住んでいるスコットキャロン氏は、日本を理解しており、根付いてくれているんだろうと思うのですが、Ichigo Asset Management International、いちごトラストPTEときて、黒幕いちごトラストにまで至る人たちは、どこまで日本に付き合ってくれるんでしょうか。

ずっと見てきた中で、やはり資金の出し手は、いちごトラストが源泉になっているようですから、ここがいなくなったら、どうなるんだろうと思いますし、いちご株式会社自体は、いろんな意味で日本人なんだとは思いますが、そこそこまだ設立から10年くらい(商号変更前からだと17年だが)の新興なんだということは、頭に入れておきましょう。

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