三井物産・イデラパートナーズ株式会社は、投資法人みらい(3476)の資産運用会社です。
資産運用会社の名称に、二つの会社の名前が据えられているのは、珍しいと思いますが、50対50のジョイントベンチャー方式となっています。
今回は、投資法人みらい(3476)を取り上げたいと思います。
三井物産は知っているけど、イデラキャピタルマネジメントのことはよく知らないなあ。
イデラキャピタルマネジメントの発祥
三井物産(8031)は、誰もが知っている上場商社ですし、すでに2005年から日本ロジスティクスファンド投資法人(8967)を運用しています。
ですが、イデラパートナーズ株式会社、その親会社イデラキャピタルマネジメントを知っていた人はかなり少ないと思います。
イデラキャピタルMの歴史をたどると、マザーズの上場会社エムケーキャピタルマネージメントとなります。
エムケーキャピタルマネージメントは、不動産アセットマネジメント事業、ファンド事業などを手掛ける会社でしたが、2012年にかのユニゾン・キャピタルの子会社マーブルHDが株式公開買付けを実施、上場廃止となっています。
ユニゾン・キャピタル
ユニゾン・キャピタルは、1998年にゴールドマン・サックス出身の日本人らによって創業されたプライベート・エクイティ・ファンドを手掛ける会社です。
ちなみに、プライベート・エクイティ・ファンドとは、複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金で企業の未公開株(プライベート・エクイティ)を取得し、その企業の経営に深く関与することによって企業の価値を高めた後に売却するものです。
ハゲタカファンドは、倒産間近な企業に的を絞って株式や債券を購入するという手法なので、大規模なリストラや事業の切り売りなど、あまり印象がよくないものです。
プライベート・エクイティ・ファンド、略してPEファンドはよくハゲタカファンドと混同されることもありますが、異なるものです。
中国資本の日本進出
エムケーキャピタルマネージメントは、非上場化された後、連結子会社であったアトラス・パートナーズ株式会社と合併し、株式会社イデラキャピタルマネジメントに商号変更となりました。
そして、2014年、ユニゾン・キャピタルは5月15日、イデラキャピタルマネジメントの全株を中国の企業、復星集団(フォースン・グループ)に売却します(正確には、マーブルHDごと買収)。
復星集団は、設立当初は、小規模な調査会社でしたが、現在では、保険、不動産、鉄鋼、小売りなどを展開する大企業へと成長と遂げたコングロマリット企業です。
復星集団は、2010年、フランスのリゾートホテルチェーン・クラブメッドの筆頭株主となったり、2013年には、米ニューヨークの一等地にある旧チェース・マンハッタン銀行の本店ビル「ワン・チェース・マンハッタン・プラザ」を、2014年には、ポルトガルの政府系貯蓄銀行の保険部門を10億ユーロで買収と積極的な海外進出を行っています。
2018年には、ハウステンボスに出資してHISに次ぐ第2位の出資者になるという報道がでましたが、この件は出資協議中止になっています。
このように、非常に勢いのある復星集団の傘下となったイデラキャピタルマネジメントは、その資金力を背景に、不動産への投資を積極的に進め、Jリートへの参入も計画していました。
中国復星集団G、東京ビルやホテルに投資拡大-運用資産5000億円へ(bloomberg)
その後、傘下の不動産会社を通じて、不動産を買い進めていますが、そこにイデラキャピタルが関わっています。
その後復星集団の会長郭広昌が行方不明となり、実は外資流出を取り締まる中国当局に拘束されていたなどの困難な局面はあったそうですが、日本への投資は継続されています。
消えた中国カリスマ富豪 “異形の国”のリスク露見 買収「トマム」にも暗雲(産経新聞)
(2020年にもジャックマー氏が一時行方不明と報じられたことも記憶に新しいことで、かの国では、よくあることなんでしょう。)
そして、最近では、イデラキャピタルが全株式を取得しているThe COURT株式会社を通じてホテル事業の展開を進め、北海道のトマムリゾートを含め、グループ全体で約6,900室のホテルのアセットマネジメント業務という事業規模になっていました。
投資法人みらいの上場
以上のような取り組みと平行するように、2015年には、イデラリート投資法人を設立し、単独でのjリートの上場を目指します。
しかしながら、スポンサーとして、イデラキャピタル単独では、いかにもネームバリューに限界があると踏んだのでしょう。
翌年には、同じく不動産アセットマネジメント事業の拡大を検討していた三井物産との協業による上場が成立したのです。
三井物産とイデラキャピタルのつながりもあったかもしれませんが、三井物産は、復星集団の本拠である上海でも、三井物産(上海)貿易有限公司として活動しており、直接の関りもあったでしょう。
主な組み入れ不動産として、品川
中国の復星地産グループ、品川のオフィスビル取得(日本経済新聞)
上場後に話題となったのは、さくら総合リートをめぐり、スターアジアと争った敵対的買収劇でしたね。投資法人みらいとしては、見事に逆転ホームランを食らった事件となりました。
また、比較的良い話題としては、ホテルからオフィスへのコンバージョンで、テレビ報道にも取り上げられたりしました。
これは、主にイデラキャピタル主体での取り組みだと思います。
経営破綻したホテルをサービス付オフィスへコンバージョン!大阪オフィス立地を生かしたJ-REITみらいの戦略(kenbiya)
このように、50%中国資本であること、三井物産の本気度がいまいち測りかねること、買収劇の敗北という要件から、リート市場2020年のコロナ後の回復途上にあっても、割安に放置されていたと思われます。
ちなみに、投資法人の執行役員兼運用会社代表の菅沼通夫氏は、三井物産の出身ですし、副社長の柳谷宗吾氏は、旧エムケーキャピタルマネージメントの出身です。
他の取締役や運用部長さんなども三井物産と旧エムケーや旧アトラスの出身者で占められており、今のところ復星集団からの役員派遣はないようです。
みらいの未来へ
中国の巨大企業復星集団と日本の名門商社三井物産という一流企業をバックに持ちながら、なかなか小さな戦いをしてきた印象があります。
最近では、ディフェンシブ物件を増やすということで、機材管理センターやショッピングセンターの底地を買っていますね。
ここは、コロナ後のリート市場の回復の中でも投資口動きがなかなか緩慢で、増資ができる水準ではありませんでした。
しかしながら、2021年に入って、足元では徐々に盛り返しをみせています。
この銘柄の不安材料をからすると、一度三井物産のパイプラインでビッグディールをやってのけるのが理想ですが、どうでしょうか。
また、復星集団ならイデアを通じてもっとドカンと物件持ってきても良さそうですが、どうでしょうか。
いずれにしても、いまのところ、未来の読みづらい点がこの銘柄のポイントかもしれません。
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