Real Estate Investment Trust
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不定期ですが、【Jリート考】と称しまして、リート投資家の方が今後のリート相場を考える上での材料となりそうな考え方などを紹介していきたいと思います。

今回は【決算check】ということで、先日リリースされましたコンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)の決算説明資料を見ていきたいと思います。

コンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)は、住宅系リートの中では、比較的上場してからまだ浅く、規模的にも小ぶりということで、損益計算書を中心に見ていきたいと思いますが、今回も住宅系ということで、現物不動産の収益事業に照らして考えてみたいと思います。

2015年7月期(第10期) 決算説明資料
http://www.comforia-reit.co.jp/site/file/tmp-BqJAJ.pdf

説明資料の27ページを起点に見ていきたいと思いますが、業績予想差異ということで、第9期から次期である第11期までにかかる損益計算書の推移といった資料になっています。毎年現物の収益不動産の確定申告をされている方は、Jリートもこうした損益計算書で見てみますと、割とイメージが湧きやすいことに気づかれると思います。

まずは、はじめの方の科目で「賃貸事業収入」ですが、これは、家賃ですね。この点、現物不動産の収支とどこか異なるかと言いますと、やはり次期の収益を予想することの難しさかと思われます。自分で運営しているアパートやマンションの賃料水準であれば、すべて把握されていますでしょうし、随時どこが空き室になったから、賃料をいくらにするだとか、リフォームにいくらかけるかということをリアルタイムで把握しているため、年間の見通しが立てやすいのですが、リートの場合は、当然ですが、投資家としては、運営を委託していますので、そこまでのリアルタイム情報は提供されません。

たとえば、第10期の「賃貸事業収入」にかかるもともとの予想と実績を見てみましょう。4,731百万から4,721百万に下がっていますね。これは、現物不動産であれば、ある程度の段階で予測はつくのですが、リートの場合は、法人からの発表がないと、数字レベルで予測するのは困難なんですよね。

また、一方で、「その他賃貸事業収入等」とありますが、これは、礼金、更新料ですけれども、こちらが184百万から230百万という結構な幅で上向いています。更新料もあるのですが、更新料はある程度予想できますので、おそらくこれは、礼金の分が大きいのではないでしょうか。とすれば、結構、入居があったということですね。たいていの法人が稼働率を公表していますが、入れ替わり数までは随時公表されていないので、これもなかなか予想しがたいところです。

これらの2つから、法人の事前予想よりも入退去が多くて、空き期間の発生で賃料は減った一方で、退去に対する入居も進み、礼金が増えた、という推論もできますが、この程度です。

違う観点から、ここで、9ページを見てみましょう。今期第10期でようやく賃料の増額件数が減額を上回ったという内容になっています。であれば、なぜ「賃貸事業収入」が下がったのかということに絡むわけですが、予想よりも増額件数が少なかったのか、もしくは件数はあったが、賃料減額額が大きかったという推論もまた成り立つものと思われます。

さて、ここで27ページに戻り、次期である第11期を見てみましょう。第11期は、184日と日にちも3日多いですし、引き続き賃料の増額件数が伸びると見ているのかもしれませんが、「賃貸事業収入」4,741百万と続伸の予想となっている一方で、「その他賃貸事業収入等」は155百万と減額予想です。特に、礼金は水物ですので、低く見積もっておくのが通常かと思いますし、今期は8月から1月ということで、賃貸市場としては、繁忙期と言われる2月3月を含んでいない点もあるのかもしれません。

次に、「賃貸事業費用」も少し見ておきましょう。第10期においては、予想863百万から実績922百万へと増額修正となっています。この費用のうち管理費だとかは先に読めると思いますので、読めないのは修繕工事費用かと思われます。こちらは、通常の修繕費用もあろうかと思いますが、入退去が多ければ、原状回復工事も必要となりますから、礼金が多かったということは、それだけこうした工事も実施したということかもしれません。

さきほど賃料の増額件数が増えたという資料もありましたが、たとえば増額になったとしても、居室のリフォームにお金を大きくかければ、そりゃそうだとなりますし、いわゆるリフォーム利回りが悪ければ、それはよい経営ではありません。このあたりは、現物不動産の経営にあっても、実際大家さんは悩まれる点ですし、これこそ経営なんだと思います。見落としているかもしれませんが、決算短信を見ても、このあたりの原状回復工事にいくらかかったという資料はなかったように思いますので、これも推測しかできません。

この点、次期第11期は、98百万の減額予想となっていますが、入退去や突発的な修繕が費用となれば、当然ですが、上振れすることになります。

以上、見てきましたが、予想と実績が離れる可能性があるのは、通常これらの科目かと思います。ほかの減価償却や租税はほぼ予想できると思いますし、営業外で金利の変動があるくらいなのではないでしょうか。増資だとか物件取得があれば、そのほかの要素は増えますが、こうやって大家さんベースでリートを見てみると、少しイメージが湧きませんか?

アパート・マンション経営の基礎は、賃料と修繕費で、それらを年間どうコントロールしていくかということですが、リートといえども、根っこは同じだと思うのですけれども、いかんせん、投資家からすると、委託をしているので、リアルタイムでそれを見ることができませんし、自分でそれをコントロールすることもできません。

不動産投資を小口証券化して、売り買いしやすくしたメリットの裏側もあるということで、このあたりは、決算書資料をもとに、ある程度の見定めをしていくのが基本線になろうかと思っています。

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