Real Estate Investment Trust
photo-1420819453217-57b6badd9e19
 

リートの各投資法人における資産規模については、だいたい600~700億規模くらいはないと運営が厳しくなると言われています。昨年度からJリート市場では、厳しい相場の展開が続いていますので、上場もだいぶ減少しましたが、2013年から2016年までは、2016年の7銘柄をピークに5~7銘柄が上場されていました。

そのような中で、小さい資産規模で上場となり、その後の不動産市況などの事情もあって、なかなか資産規模が増えていかない投資法人もあります。以下は、資産規模の一覧ですが、700億にも満たない投資法人は、現在10法人となっています。つまり全体の6分の1の銘柄が、いまだ規模が小さいわけです。
http://www.japan-reit.com/ranking/all#asset

ヘルスケアリートである3法人が入っており、このあたりの資産規模の小ささは、以前から大丈夫かという声が上がっているところで、どこかに吸収されるしかないのではと思われておりましたが、ジャパン・シニアリビング投資法人(3460)は、実際に合併ということになりました。

ケネディクスなどREIT2社、18年3月に合併(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2335048010112017DTB000/

今回は、この不動産戦争における規模について、考えてみたいと思います。

不動産戦争における規模の意味とは

さて、先ほどのジャパン・シニアリビング投資法人(3460)が合併となった経緯は、いくつかあると言われています。この法人の資産規模は、282億円ということで、全投資法人中、下から3番目でした。

ケネディクス・レジデンシャル投資法人とジャパン・シニアリビング投資法人の合併とその背景について(japan-reit)
http://www.japan-reit.com/column/2017/1252

上記記事にあげられているのは、合併すれば、負のれんが生じるというメリットがあるということのほか、「シニア住宅は低い利回り(高い不動産価格)での取引が続いているため、ディスカウント増資を行って分配金水準を維持することも困難」とされていますね。

このディスカウント増資というのは、もともとの1口あたり純資産よりも低い価格で増資を行った場合を言います。これをやってしまうと、分配金に下押し圧力がかかることになり、投資家としては非常に不満だということになるのですが、この下押し圧力は、資産規模が小さいとより大きくなるわけです。

【リート考】リートにおける良い増資(PO)と悪い増資の見定め方。

また、仮に、昨年のJリートの相場市況が良好であったなら、そもそもディスカウント増資にならずに済むということでもありますが、実際は、非常に厳しい中であったわけでありまして、増資もできず、資産規模も増えずという、このままではじり貧状態という判断下のもと、一つの突破口として、合併があったものと言えるのではないでしょうか。

銀行になめられる、なんてことも

さて、冒頭に不動産戦争という中見出しを付けているのはなんだろうということですが、ここからが生々しい話となります。それは、規模は力ということです。

あえてリアルな表現で書いてしまいますと、規模の小さな投資法人は、銀行から甘く見られて、金利もお高めにしていただけるということですね。ですが、これは、とても当たり前のことで、銀行から見て、リスクの高い貸出先には、それだけの見返りを求めないとお金は貸せません。

こうしたことがより顕著になるのは、不景気のときです。リーマンショック後の投資法人は、本当に銀行の可愛がりを受けたもので、国が慌てて基金を設立するなどして、支えてきた経緯があります。

こういうことは、規模だけの問題ではなくて、スポンサーの信用問題という点も非常に大きいのですが、少なくともとりあえず、大きくなっておかないと危ないぞという視点もあるわけです。

Jリート勝ち組〟年間配当1万5000円超、運用資産規模が鍵(健美家)
https://www.kenbiya.com/news/6110.html

少子高齢社会を受けてヘルスケアリートは日本の少ない成長分野だと期待する海外投資家が実は多い。ただ現状では、運用資産の規模が小さいのが課題となっている。マーケット関係者からは、「小規模リートの上場は、流動性の観点から市場から歓迎されていないと感じる。海外投資家ほどその傾向は顕著だ」との声が聞かれる。(30.2.14 健美家)

そして、やっぱり資産規模が小さい投資法人に投資するのは、不安だという投資家のウケも良くないというそもそものところもあるでしょう。

時に、分配金がヨコヨコであったり、下手をするとちょっと減るくらいのギリギリの公募増資をする投資法人もあるわけですが、それを押しても規模拡大をするのには、今回は御免、でも長い目で見たら必要なんだという事情もあるということになるのです。ただ、投資家としては、そのような状況に追い込まれたのが悪いんでしょと考えるものです。わたしtisanもそうです。

現物不動産の場合はもっとリアル

現物不動産ビジネスの世界でも同じことが起こります。まだ投資規模の小さな新米不動産投資家は、黙っているともれなく皆様から可愛がりをいただけることになります。銀行や管理会社、仲介会社、リフォーム会社しかりですね。

取引というのは、信用と継続性が大切ですから、少なくとも規模が大きいということは、すぐには消えないだろうという信用と継続的な取引が期待されるということです。ですから、資産運用のアロケーションの1つとして、現物不動産も少し取り入れようという発想には、注意が必要だと思います。

例えば、アパート1棟の大家さんと区分所有1つの大家さんでは、どちらが皆から可愛がられるかということです。可愛がりの意味があれですけれども、踏み出すならある程度の本腰度が求められる世界だと思っています。

スポンサーリンク

コメント

この記事へのコメントはありません。

コメントする


※メールアドレスは公開されません。