株式会社TATERU(タテル)の提供する新築アパート融資に係る書類改ざんがニュースになっています。
不動産会社タテルで新たな書類改ざんが発覚(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/238934
株価も下がり、評判も下がっていますが、評判が下がったのは、タテルだけではなく、不動産業界全体もではないでしょうか。
いつもながら思うのですが、こうした土地付き建売である新築アパートの利回りは6%程度と言われています。土地の用意が最初からあり、建物も企画お任せで建ててくれるのですから、その費用は上乗せされていても、さもありなんです。
それにしても、いつも思うには、この程度の利回りのアパートを買うのであれば、リート買った方がいいのではと思っています。今回は、そのシミュレーションをお届けします。
目次
比較の前提
まず、今回の比較の前提は、インカムゲインだけとしたいと思います。キャピタルゲインについては、リートの場合、市況に左右されますし、現物不動産でも同様です。これは、比較しがたいのです。
一見現物不動産の方がキャピタルゲインが大きく思えるかもしれません。ですが、現物不動産のデメリットは、リートのようにボタン一つで売れるといった明確性がありませんし、依頼した不動産屋の腕の良しあしなど、不確定要素が多いんですね。
また、売るだけで、仲介料が、3%+6万とかかかったりするので、例えば、1億5千万の物件を売ったとしたら、456万円ももっていかれたりします。これを上回るキャピタルゲインを得なければ、赤字です。
初期設定
では、初期設定です。自己資金100万としましょう。リートとタテルのアパートをそれぞれ自己資金100万で購入したことにします。タテルのアパートは、銀行が貸してくれますが、リートは、貸してくれませんので、そのように計算します。
リートの場合
今回は、NISAを使うこととします。100万円分のJリートを購入して、japan-reit.comに載っている全銘柄平均利回り4.19%で計算します。
100万×4.19%=41,900円
これが年間配当となります。NISAなので、非課税となりますから、非常に計算が楽ですね。
タテルのアパートの場合
最近の事件で、ネット上で見積もりを掲載しているユーザーがいるので、そちらを参考にしたいと思います。
まず、タテルの見積書に載っている収益と費用の構成は以下のとおりです。もちろん、そのままですと、あれなので、結果に影響がない範囲で、少しデフォルメしています。
【見積書】
木造9部屋(土地:8000万,建物6500万、諸費用500万)
自己資金100万、金融機関A借入14,400万(金利2.5%)、金融機関B借入500万(金利3.8%)
(年間収支)
家賃収入854万
借入支払662万、管理費52万、システム料12万、清掃費6万、固定資産税48万=780万
差し引き 74万
上記の見積りで、タテル的には、利回り6.2%ほどと明記しておりますが、単純に年間家賃を取得価格で割って計算すると、5.6%ほどになります。これは、分母の取得価格をどう置くかで変わってきます。こういうのを利回りのマジックといいます。
つまり、タテルの計算では、取得価格に外構・造成工事と全体の諸費用が含まれていない分母を使っていると思われます。これは、タテルに聞いてみないと正確ではありませんが、分母を小さくすれば、利回りが大きくなるワナのようです。
さて、74万なら、タテルの勝ちだなと思った方は、少し危険です。実際には、見積書に載っていない経費もあるので、何がいくら載っていないかは、投資家が自分で考えなくてはならないのです。ここは、重要なポイントです。
見積書に載っていない経費
法人設立費用 30万(ただし、今回のシミュレーションからは、除くことにします。)
不動産取得税 120万(ただし、今回のシミュレーションからは、除くことにします。)
共用部分にかかる光熱水費 年3万
火災・地震保険 40万÷10年+15万÷5年=7万
※実際は、諸費用での一括払いに含まれているようですが、会計上毎年発生するので、支出に含めます。
税理士費用 20万(法人スキーム)記帳代行
法人税 0円
家賃854万-借入金利息約345万-経費181万-減価償却295万-取得税120万
法人住民税 7万
本当の手残り
74万-37万=37万
これは、リートを上回ったといえるのでしょうか? 法人設立費用と不動産取得税を加味していませんから、ずいぶんと手加減をしています。
それはさておき、タテルアパートには竣工後最近の数か月の間、家賃保証があると言われていますが、その後は、退去した際には、以下の費用がかかります。
退去があった場合の費用
原状回復工事 10万程度(クリーニングと簡易な修繕)
タテルアパートのセールスマンの想定
仲介広告料 8万(1か月分として)
空室期間の減益 16万(空室期間2か月として)
たった2か月の退去空室が発生しただけで、34万もの下落となり、収支が一気に3万。この時点で、リートに敗北となります。一度の退去発生でガクッと収支が落ちることがリートとの決定的な違いですね。
結婚するとか家を買ったなど、完全に入居者都合による退去は、だれもコントロールすることはできません。こうした費用は、新築でも中古アパートでも避けられない費用なのですね。
セールスマンとしては、新築なので退去はないし、すぐに次も決まりますと言うでしょうが、仮にすぐに決まるとしても、最低でもクリーニングなどの原状回復と仲介広告料は必要な費用ですね。
また、新築アパートの場合は、最初の入居者が退去した以降、いわゆる新築プレミアムが落ちますので、家賃下落も加わることになります。例えば、月2千円下落しただけでも、年2万4千円も収益が下がるのです。
心理的な負担は見えない負担はプライスレス
最後に、そもそも、タテルアパートの場合、1億を超える借金をしているので、それは現物のレバレッジメリットでもありますが、一方では、とても大きなリスクを背負っているわけです。それで、現物のリート100万とそんなに収支が変わらないのなら、何のための投資でしょうか。
この心理的負担は、プライスレスです。
結局どこが問題なのか
タテルアパートのどこが問題なのでしょうか。建物の奇麗さやIOTアパートをうたった先進性は、まったくもって問題ないでしょう。
金融機関の金利も決して安くはないですが、融資期間が長くとれていますし、自己資金を使っていない点では、効率的とも言えます。
よくフルローンは、問題だと言われますが、一番の問題はそこではありません。どんなに金利が高くても、レバレッジが高くても、物件の収益力が高くて、十分にペイするのであれば、回っていくからです。
物件の利回りが6%ほどなのに、そこにフルローンを組み合わせてしまうから、手残りが少ないのです。つまり、問題は、物件の取得額が高いことにあります。
それは、株式会社TATERU(タテル)が土地を仕入れ、建物建設までオールインワンで面倒を見て、IOTもどんどん取り入れていくなど、経費がたくさんかかっていることもあります。また、タテルは、販促DVDに著名なサッカー選手を起用し、セミナーも定期的に開催していましたから、ある程度の取り分を得ていかないと成り立たないのだと思います。
不動産投資熱の高まりにより、一般のサラリーマンたちが低い利回りでも購入するようになったので、より利益率を高くもっていった結果ではないか、と想像します。
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